第7話
夕方、家に入ると既に結衣の靴が玄関に揃えてあった。
「·····はぁ」
また、きっと冷たい目で見られるのだろう。それを考えると少し気分が重い。
ガタガタガタンッ!
「な、なんだ!?」
2階からものすごい音が聞こえてきた。
「結衣!?」
俺は階段を駆け上がると妹の部屋の扉を開けた。
「大丈夫か·····」
そして固まった。ドアを開けた俺の目に入ってきたのは·····無数のアニメグッズだった。ゲームからフィギュアから漫画から多大な量だった。
「んー、確かぁ、このへん·····っ」
ガタガタッ
結衣は上半身をクローゼットに突っ込むとなにやら必死に手を動かしていた。
「あ、あった!」
バサバサバサッ
「な、にを·····?」
「ふわぁ〜!えへへへへぇ·····!」
結衣は顔をすごく緩ませると手に抱えた箱に頬擦りをした。
「おい、ゆ、い·····?」
「ん?」
そしてようやく俺の方を向くと顔を固まらせた。
「お、にぃ·····っ!?」
そして顔を真っ赤にさせるとアニメグッズの山を俺の視界から外させようとした。
「み、見ないで!?」
·····そこまで隠すものなのか?別に、何も言ってないだろうに。
「も、もう!なんで部屋に勝手に入ってくるの!?ノックくらいしてよ!だからデリカシーがないって言われるのよ!」
「す、すまん」
俺は目は多大なアニメグッズに向けながら結衣に軽く謝った。
「まったくもう·····」
そして結衣は真剣な顔で俺を見つめた。
「で、なんの用なの」
「いや、2階からものすごい音がしたから泥棒でもいるのかと思ってドアを開けたらお前がクローゼットに上半身突っ込んでいるところを」
「く、詳しく言ってとは言ってないのっ!」
·····なんなんだ。いつもと何かが違う。
「と、とにかく少し出てって!声かけるからっ!」
俺は結衣に背中を押され部屋の外に出された。
「なんだったんだ·····?」
あの無数のグッズの量。そしてあの慌てよう。いつもとは何かが違った。もしかして·····結衣はオタク、と呼ばれるものなのか?
「よく、意味がわからねぇ·····」
頭の中が暴走してしまっている。
俺はしばらくそのまま廊下に座っていた。
キィ・・・
ふと気がつくと先程まではしまっていた結衣の部屋の扉が開いていた。
「·····入って」
「あ、ああ·····」
ゆう事を聞いて部屋に入る。中は先程とは違いさっぱりとしていた。
「·····なに」
「い、いや。さっきのってなんなのかなと思ってさ·····」
「·····見てわかんないの?」
「アニメ、グッズ·····か?」
「··········」
結衣は俺の顔をじっと見つめるとふと問いかけてきた。
「·····変、とか思う?」
「は?」
「だ、だからっ!さっきの変とか!思うのっ?」
結衣は顔を赤くさせ俺に再度聞いてきた。
「い、いや、ちょっと待てよ。あれ、やっぱりお前のなのか?」
「あ、当たり前じゃん!で、どうなのっ?」
「い、いや、確かにビックリはしたけどな?」
「うぅ·····っ」
赤い顔のまま俺を軽く睨みつけてくる。そんなに睨むなよな·····。
「·····変ではないんじゃねぇの?」
「えっ·····?」
「だから、変ではないんじゃねぇの?好きなものなんて人それぞれだろ」
「ほ、ほんとにほんと?嘘じゃないのね?」
「嘘じゃないよ」
「嘘だったら針千本なんだからねっ?」
·····お前はどこの子供だよ。
「別に俺はお前の趣味がなんであろうとどうでもいいしな」
「そ、そっか。そうなんだねっ」
結衣は先程の緊迫した表情とは違い嬉しそうな表情になっていた。
学校のアイドルとまで評される妹は実は根っからのオタクだった 早龍アイ @Aika16
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