次世代「戦闘」の展望を描き出す一作。

先進国の戦闘技術は飛躍的に向上している。世に出る技術は、一般的に5年前に開発された軍事技術とも言われる程に。
安全保障の概念が目まぐるしく変化する今の世界で、このように「高度な戦闘支援技術を持つ部隊」と「後進国の武装兵」の衝突は実に「現実的」と評してもいいだろう。
これは「戦争」ではなく「戦闘」だ。戦闘を展開する部隊。その狭間にパワーバランスの均衡性は無く、あるのは秩序と法。
そしてドローンが飛び交う戦場、そこに人の優越性は存在しない。
「ドローン反対」のデモを行う人々の描写は、非常に皮肉が効いていた。「人を殺す技術」に反対する事が正義だと考える人々。即ちそれは、世界に人間の兵士を送り出す事に過ぎない。ドローンは、「剣」でもあるが「盾」でもあるのだ。

近未来・軍事をテーマにしながら読みやすいライトな文体で描く世界。私が個人的に好きなジャンルであるが、万人に向けて、特に安寧のぬるま湯に浸かる日本に向けて届けたい。
この世界観に興味を持たれた方は、故・伊藤計劃氏の「虐殺器官」をお薦めしよう。