空から戦地を見てみよう

日本国では火器の所有及び使用に関して非常に厳格な規定が存在する。
そんな国内に存在する民間軍事会社勤務の新入社員が今作の主人公だ。

「未経験でも気軽に戦争ができる民間軍事会社」
その通り、オペレーターとしての職務を遂行する主人公は国内の”快適”なオフィスからホットゾーンにアクセスし情報・火力のやり取りを行う。
非戦闘行為の担当区分からより”クリティカル”な担当へと踏み込んでいく主人公。

しかしその光景は実にコミカルで…実にシニカルだ。

富裕層より低所得層への課税、法改正に伴う”倫理”の灰色領域の拡大と国内情勢は冷え込んでいる。そして尚腐食した”平和”に胡坐をかく国家とその中で生きる国民。
液晶の先で心躍る『ウォーゲーム』がそこにはあり、地獄の沙汰も金次第と神は笑う。混在する正義と冷たい現実の中で飛び交う火薬。

作者の描く世界は実に美しい。誰も傷付けない優しき世界。
そしてまた作者の持つ知識や技量が良い文章を組み上げ、軍事的な知識が無くとも十分に楽しめながら、また同時にその方面に明るい者も唸らせるだろう。

次世代のハイテク戦争、快適な部屋で覗く液晶。
空から戦地を見てみよう。