エピローグ

数日後


「久しぶり、浩司君。」

「千里さん、お久しぶりです。…それと、先輩。」

「邪魔なら帰るわよ…。」

「それは、困りますよ…。」

「それじゃあ、行きますか…。」


カフェに入った俺達は、それぞれ別々のメニューを頼んだ。


「あれから、どうなったの?」

「遺産ですか?相続税もかかりますがもらうことになりました。」

「そうですか…。」

「今日は、おごりますよ…報酬も兼ねて…。」

「それじゃあ…いやっ、やっぱり…。」

「ちなみに、今日の代金は浩司さんに渡す報酬から差し引いてます。でっ、それの残りがこちらです。」

「…ありがとうございます。」

「手玉に取られているわね。」

「王手ですか?」

「リーチよ、ビンゴのほうのね。」

「そうですか…それよりも何であの2人が生きていると思ったのですか?」

「消去法と偶然ってところね。どちらが生きているかは未確定要素だったの。」

「何ですか、それは?」

「まず、増えた2人の死体ね。」

「増えた6人目ですね。」

「バラバラ殺人のトリックですか?」

「ええ、確実に死んでいたのは弘人さんと武さん。恐らく、お風呂に入っていた時に殺されたと考えるべきね。確認しなかったし…。」

「なるほど、でも、そう考えると少し不思議ですよね。体のどこを切り取ったんですか?」

「まず、外に放置されていたのは頭と手足で、部屋の中にあったのは胴体ね。」

「でも、それだと形がおかしくありませんか?胴体のところがへこんじゃいますよ。」

「それが、ベッドルームで仰向けに寝ていた謎よ。そもそも変じゃない?」

「頭が無いのに仰向けってところですか?」

「そう…。」

「それじゃあ、体に枕を入れてたんですね。それで…布団で出血を止めようとすれば…。」

「警察が来るまで遺体が確認されない。」

「そういうこと。最後はキッチンの死体、あれは穂乃花さんが動転していたことと火が消えるまでの間に首を吊っていたことが不可解さの原因だったってことね。穂乃花さんとは弘人さんが発見されて話すことができなかったのが何よりも問題だった。」

「これで…解決ですね。」

「まったく…何でナイフで刺されても血が出なかったとか思わないの?」

「あっ…いや…でも…。」

「それは…簡単ですよ。あのベストが防刃だったからです。それと、もう一つあります。」

「なんで、私が呼ばれたかだよね?」

「川上さん。」

「久しぶり、千里ちゃんとは前会ったばかりだね。」

「はい。」

「それで…その理由は?」

「私に罪を擦り付けるためだ。武は遺産については何も考えていなかったみたいだったからね。本当に…。」

「おそらく、私のお父さんとお母さんも私が死んだ後に殺すつもりだったんでしょう。」

「そうかもね。」


先輩は、ただただそう言った。

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雲が晴れるまでに…。 葵流星 @AoiRyusei

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