ep5:帰宅
本数がクソ少ない我らがローカル線は、Jアラートが発令されても止まらないが1回止まると全然復旧しない。1シーズンに1回か2回、アクシデントで運休などということはあるのだが、それは決まって午後だ。
学校に行く電車が止まればいいのに、というのは誰しも1回は考えることだが、残念ながら午前中は何の問題もなく運行していることが多い。
今年はまだ運休していない。枝に着雪し、重みで木を倒してくれるであろう頼れる味方は、すでに融けきってしまっているからだ。暖冬というのは敵かもしれない。
この典型的なローカル線は、全国のローカル線の例にもれず堅調な赤字を保っている。
利用者が少なく、なんで廃線にならないんだという疑問も当たり前に思える路線だが、この路線の上位会社が新幹線も運行している。そこからがっぽり入ってくる金で、このような赤字路線を維持できているようだ。
何が言いたいかというと、そんな惨状である路線の駅は、予算不足によって非常に寒いということである。街の中心部でもなんでもない小金谷工業高校の最寄り駅は当然酷い造りだ。
駅舎はここ10年の間に立て直されたらしいが、少しの壁と短い屋根があるだけだ。無風であれば雨も凌げるが、ちょっと風が吹けば濡れてしまう。
夏はその風である程度は涼しく感じるのだが、冬は逆にめちゃくちゃ寒い。今日もしっかり0℃を下回っている。前言撤回。暖冬は味方だ。
着こんでいるとはいえ長い間待つのは嫌だが、さっきも言ったように残念ながら本数が少ない。
部活なら電車にあった時間で終わるような活動時間に決まっているが、今日はバッテリーが尽きた時間が活動の終了時間だったため、30分くらい待たないといけない。
彼女と手つなぎながら待ちたかったなー!!と思ったが、そんなことは有り得ない。ポケットに手を突っ込みつつ悲しんでるしかないのである。
「うおら」という声と共に頭にフライドポテトが降ってきた。もちろん容器が入った袋で叩かれただけだが。知り合いのロボ部が近くの居酒屋で買ってきてくれたらしい。
「おごりとはありがてぇ」と言うと、
「んなわけねぇだろ半分払え」と言われた。ケチくさい野郎だ。まぁ、実際ありがたかったので、100円渡した。
最近臨時収入があったため夕飯を食って帰ってもいいのだが、帰りが遅くなると駅から家までの道が辛い。寒すぎる。
隣のロボ部_____小林という奴が、プログラミングの話をし始めた。
ロボ部の自律制御型のマシンは、R9Cシリーズという名前のマイコンボードを使用している。これは16bitのマイコンで、動作クロック周波数は20MHzだ。RAMは1.5~2.5KBとなっている。
このマイコンはメモリマップドI/Oを採用している。メモリマップドI/Oとはどんなものか、というと...。
まず、マイコンの内蔵メモリ(RAM)の一部がI/Oポートのものと共有されている。
I/Oポートとは入出力の接続点のことで、ブザーやコネクタ、LEDやスイッチがこれにあたる。
CPUから、そのI/Oポートと共有されているRAMのアドレスに信号を送ればI/Oポートで出力され、I/Oポートを通じて外部から信号を送ればデータがそのアドレスに記憶される。
この方式でなければ、RAM以外にI/Oポート専用のメモリ空間を確保しておく方式がある。
この方式をポートマップドI/Oというが、ポートマップドI/Oでは、データの入出力のためにはRAMとI/Oポート専用のメモリ空間の間でデータをやりとりする必要がある。
メモリマップドI/Oではこれをする必要がないので、CPUの負担軽減が可能だ。最近では半導体素子の製造能力が上がり、そこまでCPUの負担軽減、簡略化を考える必要がなくなっているが。
そして、今小林が困っているのが、このデータの入力だ。
「負論理」という、I/Oポートの先の基盤の関係で、センサなどがONのときに電流が流れて来ず、OFFのときに流れてくるシステムがある。これが分かりにくいので、「電流が流れてきていない=0」のときに、1に反転したいことがある。
そこで値を反転させる方法として、C言語では値の反転に、「~」を付けることがある。が、これがビット単位だと上手く効いてくれないらしい。
「~p2」のように、ポートを全部反転させようとすると上手くいくのだが、「~p2_3」のようにポートの中のあるビットを反転させようとすると上手く行かないということだ。
仕方がなく、否定(NOT)を意味する「!」を付けて何とかやっているということだが、調べても改善方法がないらしい。
まぁ、このマイコンを製造している会社が沈みゆく泥船と化しているため、会社からの改善は望めないだろう。
頭が痛くなる話をしていたら電車が来た。通学時間帯の5時台だからなのか、ある程度人が乗っていた。やっぱり電車の中は暖かい。
1週間が終わって、いつも通り疲れた。最寄り駅に着くまでちょっと寝よう。
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