ep3:SHR

 慌てて教室に戻ってきたが、まだ俺ら以外にも戻ってきてない奴らがちょっといた。なんだよもう。もっとあの先生を拝んでおけばよかった。


 教壇の上には既に担任がいた。時間的には、まだいない奴らが戻って来る前にSHRが始まりそうだ。手近な奴の頭をボカっとやり、席に着く。挨拶だよ挨拶。


 うちの担任は物理が専門教科だ。そしてこいつはみんなから嫌われている。今年で35になるらしい女性なのだが、そんな歳にもなってぶりっ子を装っているので、すんごく、とてつもなく気持ち悪い。


 1度俺に向かって泣きまねをされ、それを至近距離で見させられたことがあるが、とてもじゃないが直視できなかった。


 ついでに言うと、彼女は担任としての仕事へもちょっと疑問符が付く。例えば、彼女は俺たちが1年生のころも1Jの担任をしていた。その1年のうち後半はSHRのときは教室にいることなく、いろいろと副担任に任せていたのだ。


 1年生のうちから仕事しねぇなどと言われていた彼女だが、2年生になってからはSHRに出てこないなんてことは流石になくなった。その代わり、と言っては何だが、彼女は色々と連絡事項がビミョーなことになっていらっしゃる。


 例を挙げれば、行事の1日前に概要などのプリントを配布してきたり、服装を指定しておきながら、当日になると他クラスはそんな格好をしていなかったり。などなど...。


 まぁ一部は学年からの連絡が遅かったとかありそうだが、それでもちょっと酷いんじゃないかというレベルである。


 もともと彼女は東京の会社で働くキャリアウーマンだったらしいのだが、闇が深い会社だったらしく、そこを辞めてこんな田舎に来たらしい。


 やっぱ田舎だし仕事がないなぁと考えたときに、大学の時ついでで取得していた教員免許のことを思い出し、教師になったらしい。ついでの免許で教えられていると考えると、色々とフクザツだ。


 思った通り全員揃う前にSHRが始まったが、すぐに残りの連中も戻ってきた。言ってたことが違うじゃねぇかよと言われる連絡も聞き逃さずに済んだようだ。


 このSHRが時間通りに終われば、ド田舎宿命の1時間に1本の電車にも乗り遅れずに済むのだが、今日はこの時間の電車では帰らない。同好会の活動日だ。

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