短編27話 数ある私と一緒に小説活動
帝王Tsuyamasama
短編27話
「なぁ
「うん、そうだねっ。三年かぁ……くすっ、最初のころは見せるのはずかしかったなぁ~」
「てことで! 遊園地行こうぜ!」
「うん。え?」
えぇーーーっ!!
私は今、大きな噴水の前にいます。
「よし舞奈、まずはジェットコースター行こうぜ!」
「え、えっ、いきなり?」
「いきなりだからいいじゃんか! どうしても苦手か?」
「う、ううん、乗ることは大丈夫だけど……」
「じゃ行こうぜ!」
「あ、ちょっとぉっ……」
私、
春仁くんって、たまにこうしてお出かけすると手を握ってくることがある。その度に私はどきどきしちゃってるけど、春仁くんはなにも意識してないのかなぁ……。
そんなことより! 今私たちは遊園地に来てるんだよ!? 本当に春仁くん意識してないのっ?
(私と気兼ねなく接してくれるっていうところは、うれしいけど……)
「この様子ならちょっと待つだけで乗れそうだな!」
わくわくしている春仁くん。私ちょっとどきどき。あ、春仁くんにじゃなくジェットコースターにねっ。
(……は、春仁くんにもだけどっ)
今日の春仁くんは青色のジャケットに白のシャツ、水色のジーンズにいつもの緑色の小さめのリュック。髪は短くて健康的な男の子だけど……三周年記念と遊園地へのお出かけの関係を聞いたら『舞奈の小説にも遊園地結構出てくんじゃん!』って……あれは好きな二人がらぶらぶで行ってるのぉ~っ……!
(でも私もこうしてついてきちゃってるっていうことは……やっぱり春仁くんのことが、好きなのかなぁ……)
春仁くんは、私が書いた小説をいちばんたくさん読んでくれている人。美術部に入ってて、なんと私の小説の絵を描いてくれてる。
中学校では吹奏楽部で一緒だったから、私としては高校に入っても一緒に吹奏楽部をしたかったけど、『舞奈の小説にもっとうまい絵を添えたいんだ!』なんて言って美術部に入っちゃった。
(そんなこと言われて、好きにならないわけないよね……)
今のこのどきどきしちゃう気持ちは、やっぱり春仁くんが好きってこと……だよね……? でもまだもやもやしているというか、はっきりわからないというか……。
「春仁くん、美術部はうまくいってる?」
「それがさーめちゃくちゃ難しくってさー。たぶん美術部でいっちゃんへただぜ俺?」
にこにこしてる春仁くん。
「どうしてもつらくなったら、吹奏楽部に来ても……いいと思う、よ?」
「それはないな! 俺は一度決めたらやり通す! 俺舞奈の作る小説めちゃくちゃ好きなんだよ! 舞奈のおかげで小説のすごさに気づけたしな!」
あぁ……春仁くんはまたそうやって、思っていることを堂々と言ってくれる……。
「だから舞奈、賞もらって本売り出すときは、挿し絵俺にやらせてくれよな!」
「ええっ、私まだそんなすごい小説書けないよぉ」
「だーいじょうぶだって! 舞奈の小説すっげーおもしろいから! ちょっと甘すぎてにやけちゃうとこもあるけどさ、でもそこが舞奈のいいとこだよな!」
「さ、さっきからほめすぎ……それに声が大きいよ……」
ジェットコースターの並んでいる列でそんなこと言わなくってもぅっ。
私たちは楽しんで過ごし、ちょっと早めのお昼ごはんを食べることにした。
いろんなお店があるけど、私たちは和食料理屋さんを選んだ。
「この遊園地の雰囲気で和食とか、くぅー楽しみだ!」
「はぁ……春仁くん、げ、元気だね……」
ジェットコースターいっぱい回った。
春仁くんはそば御膳、私はうどん御膳にした。
春仁くんはとてもおいしそうにそばを食べていました。
「にしても舞奈が小説を書き始めて三年かー! もちろんこれからも書き続けるんだよな?」
「うん。せっかくここまで慣れてきたんだから、まだ続けようと思う」
「てか続けてもらわないと、俺が美術部入った意味がなくなるぜ!」
「そうだねっ。私も春仁くんのためにも頑張らなきゃ」
「応援してるぜ!」
「ありがとう、春仁くん」
やっぱり春仁くんは素敵な男の子。
ジェットコースターや絶叫系の乗り物は乗りつくしてしまったので、やっと落ち着いたアトラクションに。お人形がいっぱい並んでいるところをお話聴きながらゆったり進むようなのとか、メリーゴーランドとか、この遊園地のキャラクターたちの開発資料館なんていうのもおもしろかった。
パレードがやってるみたいなので、私たちはパレードを眺めることにした。
大きな車にたくさん人やキャラクターが載っていたり、それを囲む人たちも踊っていたり。とても華やかで楽しい。
あ、また春仁くんが私の左手を握ってきた。私も……ちょこっとだけ力を込めた。
「いぇーい!」
踊ってる人がこっちまで近づいてきて、春仁くんとハイタッチをしていた。私とは手をつないだままで。
楽しい時間もあっという間に過ぎていき、まだ午後三時だけど観覧車に乗って帰ることにした。
春仁くんは向かい合わせじゃなく私の隣に座った。
「うぉーすげー! 水平線見えるぜ!」
「あ、ほんとだっ」
私たちは普段では見られない高い位置から、外の景色を眺めていた。
「今日は楽しかったな!」
「うん。連れてきてくれてありがとう」
……あれっ、いつもの春仁くんならにこっと笑ってお返事をくれそうなのに。
「な、なぁ舞奈?」
「なに?」
「俺以外にさ、舞奈の小説に絵描いてるやつとか……いる?」
「ううん。小説を書いていることもあんまり言わないから、絵を描いてくれてるのなんて春仁くんだけ」
「そっか。俺、舞奈のために美術部頑張るからな!」
「本当にありがとう」
ここまで私のために尽くしてくれる同級生って、春仁くんだけだよね。
「……そ、その言葉聴くために頑張ってるようなもんだけどな!」
「えっ?」
「なんていうかさ。舞奈の言葉って、どれもまっすぐ正直な感じがするからさ。ありがとうって言ってくれるの、すっげーうれしいっていうか」
「私は……思ったことをそのまま言ってるだけだよ?」
「それがいいんだよっ。そんなまっすぐな舞奈のことが…………」
……こと、が……?
「……ははっ! やっぱ舞奈と一緒にいんの楽しいや! おーっし美術部頑張るぞー!」
「は、春仁くんあんまり揺らさないでっ」
私たちは観覧車を降りて、帰ることにした。
楽しかったなぁ……また春仁くんと来ても……いいと思う。
次の日
「いらっしゃい、春仁くん」
「じゃますんでー」
「じゃますんなら帰ってー」
「あいよーってなんでやねん!」
男の子ってほんとこういうの好きだよね。春仁くんからこれは覚えなさいと言われたので覚えました。
「舞奈となら毎日遊んでもいいくらいだぜ!」
春仁くんは靴を脱ぎながらそう言ってくれました。
昨日遊園地で一日遊んだけど、今日も私の家で遊ぶことになりました。
春仁くんとはよく私のお部屋で遊ぶので、お絵かき道具を少し置いていってる。それを取り出した。
「早速絵を描くの?」
「ああ。昨日のあれ楽しかったからな。今舞奈が書いてる小説のキャラクターで描いとこうと思ってさっ」
「頑張ってね。じゃあ私も小説の続き書こうかな」
私はお父さんからもらったワードプロセッサーに向かった。フロッピーディスクもセット。
春仁くんは私の勉強机に座って道具を広げてる。そこ私の勉強机なんだけどなぁ。
私たちはそれぞれ黙々と作業を進めた。時々ある光景だけど、三年前はまさかこんなことを一緒にする男の子が現れるなんて思いもよらなかった。
一周年記念のときは、一周年記念の絵を一緒に作った。
二周年記念のときは、一緒に大きなショッピングセンターへ遊びに行った。
そして三周年記念は遊園地……じゃあ四周年記念はどうしちゃうのかな……?
(また、手をつないじゃうのかな)
思い出してちょっとどきどきしちゃった。
「……ふぅ、今日はこんなもんでいいや!」
春仁くんがそう言ったので、私は立ち上がって春仁くんの横に立った。
「わあ、いいね、これっ」
鉛筆で描かれただけの絵だけど、二人の表情がすっごくいきいきしてて、なんかいいな。
「また遊園地行こうぜ! いいよな?」
「え、あ、うん、いいよ」
「おっしゃ!」
春仁くんほんとに絵が上手になったなぁ。春仁くんは将来春仁ギャラリーを作ったときのためにっていうことで、これまで描いた絵をちゃんと残してるんだって。小学校の図工の時間のも残ってるって言ってた。
「俺もーさ。この二人みたいに、付き合いたい……かな」
「……えっ?」
今作ってる小説に出てくるこの二人は両想い。じっくり時間をかけて仲良くなっていってるんだけど……
「な、なぁ舞奈?」
「うん?」
ここで春仁くんは立ち上がった。春仁くんの方がちょっと身長高い。
「そ、そろそろー……俺たちも、付き合わない……か?」
春仁くんが、まっすぐ私を見て、そんな言葉を……
「……は、春仁、くん……?」
「高校生になったんだし……さ?」
「きゃっ」
突然春仁くんが抱きついてきちゃった! ああっ、急に胸が苦しくっ。
「は、春仁くんっ」
「お、俺さ、舞奈のためならいくらでも頑張りたいんだ。美術部に入ったのだってその決意の表れっていうかさ……なんかもう、舞奈のこと、ずっと好きだったんだけど、なんか……今のままの関係に我慢できなくなっちゃってきてさ……」
より一層力を込めて私を抱きしめてくる春仁くん。思わず私も手を春仁くんの背中に添えちゃったけど……。
「さ、三周年記念に、いかがっすか!」
あれ、私ちょっと笑っちゃった。なんだろうこの感じ。
「……じゃあ……私。春仁くんのために、これからも小説……頑張っちゃわないとっ」
ものすごくどきどきしすぎちゃってたけど、ちょっと背伸びして唇を重ねにいっちゃいました。
「……よろしくお願いします、春仁くんっ。あ、でも……」
「でも?」
「この場面は……はずかしいから、描かないでねっ」
「えー! 自分は小説で書いてんじゃねーかー!」
「ふふっ、だめったらだめっ」
短編27話 数ある私と一緒に小説活動 帝王Tsuyamasama @TeiohAoyamacho
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