第2話『激突!顧問対洋祐』
洋祐は格技館にて剣道の朝練を終えた。汗が熱気で蒸気となる中、小手をとり面を頭から外す……
顧問の尾形が近寄ってきた。
「なあ東城~
ニタニタと笑い、ねっとりとした語り口で尾形は言う。即断即決で素早いやりとりを好む洋祐とは正反対のタイプだ。洋祐自身、尾形のことは好きではない。
「はい。放課後部員全員で片桐先生と話し合う予定になっています」
部外者に首を突っ込まれるのは不愉快だった。
尾形は意味深な表情を浮かべ、去っていた。
尾形と洋祐は徹底的にウマが合わない。洋祐は文芸部では上意下達。トップダウンを好むが、剣道部は下級生も上級生もごったにして単純にローテーションで稽古の当番を決めているのがその例だ。
尾形に告げた通り、放課後には文芸部顧問片桐と部員全員との話し合いの席が持たれている。洋祐は頭を切り替えた。
* *
昼休みに舞と理紗に顧問を怒らせた経緯を説明したが、とりあえず部長に任せる、と洋祐に対応を一任した。洋祐は舞のひまわりのような笑顔に見とれた。
……緊張の面持ちで洋祐は英語科準備室をノックした。片桐はきっと鬼の形相で待ち構えていることだろう、と。
どうぞ、と声がかけられ引き戸を開ける。そこには──柔和な笑顔の顧問がいた!
洋祐は拍子抜けする。
……顧問は笑顔で中央廊下の歓談席の一角に文芸部員を誘った。
「東城君が夏休み中も『今日活動日ですよね』と積極的に来ていたのは知ってますよ。その姿勢は素晴らしいと思います」
事実である。もっとも光浦ら上級生は在籍していた時には顧問との活動日程の調整をおざなりにしていたため洋祐がいちいち顧問に確認することになっていたが。
「私もあれから考えたけれど、東城君のこれからの文芸部の運営に期待したいと思います」
顧問は微笑んだ。
……ここに、東城洋祐を部長とする新体制が本格的に始動したのである──
文芸部戦争 外山康平@紅蓮 @2677
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