静止の連続体としての振動

 虚数に虚数をかけると負の数になる。そんなことを漠然と思い出した。
 電車の中というのは、人によって単なる移動手段であったり牢獄であったり楽しみを生み出す子宮であったりするわけだが 『僕』にはそのいずれも当たっていない。『僕』自身が虚数のような存在に過ぎない。
 そうした主人公に問いかける彼女の存在は実存であり真理であり虚構ですらある。 多分、電車は無限大に目的地に近づきはしても主人公自身が無理やり電車を後ろ向きに引っ張って、出発地に戻してしまうのだろう。