第2話冒険


鉄製の階段に壁にはたくさんの古いポスターが貼ってある。どうもこれはマスターの趣味らしい。階段を登っている最中吉田さんが

「すごいですねこれ。いつのアイドルですか」

ポスターはすべて一人の昭和風のハンサムな男だった。

「惚れたんですか?若いですね〜吉田さn...」

喋ってる途中に吉田さんにふくらはぎをとんでもない突きでやられた。剣道で言ったら師範なみの突きの強さは僕のふくらはぎから全身に渡りその痛みが声にならない声となり階段にもたれこむように倒れた。

「何やってるんですか、はるかさん。行きますよ」だれがやったと思ってるんだこのメスゴリラめ。そう思い睨もうとしたが次は顔をやられる姿がフラッシュバックにより脳裏に写り込んだ。やばい、やばいすぐさま我に返り僕は立ち上がり自分の部屋に向かった。部屋のドアを開けると吉田さんが

「え、ドア鍵かけてないんですか。いまどき不用心ですね」

まぁ基本家と下の喫茶店で基本生活できるし、近くのところに大きなショッピングモールがあるからほとんど出入りしないから鍵をかけるのが面倒くさくなってしまった。

「いいでしょ別に、盗まれて困るもんなくてないですし」

本当にそのとおりだ家には高校時代から着ている衣服とパソコンくらいしかない。唯一高価そうなそのパソコンも大学のときに買ってもらったからもう10年も前のである。そろそろ寿命だから買い替えを検討しているところだ。

玄関には履きなれたブツブツ穴が空いているサンダルや高校の時にバイト代で買ったエアマックスもある。玄関に入るとき、吉田さんが玄関の靴を全部並べてくれた。

「あ、いいですよ。恥ずかしい」

「こうゆうの見るとほっとけない質なんですよ」としゃがみながら上目遣いでこっちを見た瞬間、一瞬だけドキッとしてしまった。一生の不覚である。玄関の靴を整頓してる間に僕はいつもの1つしかない部屋にいき、探してる感想用紙を探した。やっぱりない。どこにやったんだろうか。困っていると整頓し終えた吉田さんがやってきた。

「うぁ!きったな〜い」

といい、そそくさと掃除を始めた。床に散らばってる紙を用途用途にまとめて引っ越してから一年で使わなくなった棚にそれぞれ収納し、買ったはいいものの一回も使ってない掃除機を奥から出し、掃除機まで掛けた。ものの十分であら不思議、匠の技により何年もかけて汚した部屋は引っ越し前のように綺麗になっていました。

「で、吉田さん、感想文見つかりました?」

一瞬の沈黙が部屋には続いた。

「あぁあぁあーぁ!あ!ぁ!あ」

あばかり言いすぎて(書きすぎて)ゲシュタルト崩壊を起こしそうだ。吉田さんは慌てながら

「え、でもそれらしき紙なんも無かったですよ。全部小説のやつばっかで」

じゃ、本当にどこにやってしまったんだうか2日前の記憶だとゆうのになぜか思い出せなかった。

「そのクリヨタは言う読んだんですか?」

吉田さんがなにか聞いてきた。ん?クリヨタってなんだクリヨタ、クリヨタあー、僕らが探してる「繰り越し愚弄の与太郎物語」の略してクリヨタ。なかなかいいネーミングセンスをしているではないか。

「確か、1番最後に読んだような気がする。」

「んーどこに行っんでしょうね」

また部屋には沈黙が続いた。僕は沈黙に耐えきれなくなり、「あ、コーヒー入れますか?」と聞いた。「え、ええ。お願いします」僕は使い慣れたキッチンの方へと行った。自炊は良くする方だと自分でも思う。基本昼に起きて真夜中まで本を書いて朝に眠る、そんな生活を続けてるせいか一日基本2食しか食べなくなった。だから一食はポミエでマスターのおすすめを食べ、2食目は自分で料理を作った。この生活を始めて今に至るまで様々な料理を作ってきた。最初は料理ができなかったのだがマスターから教わるようになり、ある程度の料理はできるようになった。そしてキッチンでよくよく考えてみると基本コーヒーはポミエで飲んだほうが美味しいから家にインスタントコーヒーなんて無かった。僕は「吉田さーん、コーヒーなかったんで適当にジュースでいいですか」と聞くと

「え、ああはい。」

とちょっと間を開けて喋った。ん?と一瞬思ったが集中して探してくれてるのだと思うとそんな考えすぐに消え去った。冷蔵庫を開くと中にはビールしか入ってなかった。ビール缶が4本あとはスルメとか調味料系だけだった。まぁ、これでいいやと思い適当にビール缶とスルメを持っていった。部屋に戻ると吉田さんが何かを真剣に読んでいる。忍び足で近寄り、そぉーと読んでるのを確認するとそこには肌色の世界が紙面一面に広がっていて、吹き出しには「好きにして♡」と書いてある。これは間違いなく僕のエロ本だ。本というより漫画だ。僕がベットの下に隠したエロ漫画を見つけてそれを真剣に吉田さんが読んでいる。

「な、なに読んでるんですか!吉田さん。」

テンパリすぎて噛んでしまった。

吉田さんはゆっくりと振り向くと頬を少しだけ赤くして「はるかさんの、えっち」と小声で言った。そして吉田さんは僕の持っいるビールを見つけ

「あービールですか、いいですね。飲みましょー」

「え、いいんですか。感想文は、仕事は?」

すると吉田さんは僕の腕からビールを奪い取り一本をプシュッと開けた。

「別に今日までじゃないからいいんですよー

感想文の締め切りほんとは来週なんですから」

え、えぇーそれじゃあ昨日、一昨日と頑張った僕の二日間は何だったんだ。ちょっとだけ吉田さんにイラッとした。

「てなことで飲みましょ!ね、はるかさん」

と吉田さんと何年もこうやっているが1番いい笑顔を見た気がした。そして、急遽、混沌の飲み会が始まったのであった。僕はあまりアルコールには強くないのですぐに酔いが回ってしまった。吉田さんは想像だがお酒に強そうに見える。でも実際は違った。吉田さんの顔がどんどん赤くなっていき、一本を飲み干すあたりにはもうベロベロになっていた。

「はるちゃあーん。いつになったら売れる本出すんですか」

まだ僕は、酔いが回ってないのかまだちゃんとした思考回路でいられる。

「次こそは大ヒットさせてみせますよ」

「はいはい、そう言って前出した本あれ、初週そんな売れなかったんですけど次の週から地味に売れてるんですよね。地味に」

地味に地味にうるさいなぁ。そんなヒットさせなきゃ駄目なのかよ「そんな売れなきゃだめにかよ!」あ、つい思ってることが口に出てしまった。すると吉田さんはじっとこっちを見て、

「だって売れなきゃ一生ここで暮らすんですよ。ここで一生、私と下の喫茶店で打ち合わせしてるんですよ」

「別にいいよ。それで幸せだし」

思った事をそのまま言っただけだったが吉田さんは「え、」と意外な素振りを見せた。ん、もしかして照れてる?あの、吉田さんが?なわけない。すると次は急に泣き出したのだ。グスングスンと

「え、なんで泣くんですか、吉田さん」

「だって、だって、私はこのままの状態が嫌なんですよ」

え、僕の担当が嫌って意味?そんな泣くほど?

結構傷つくなぁ。だが次の吉田さんの一言でその意味がガラリと変わってしまったのだ。

「だって私、はるかさんのこと…好きなんです」

胸が飛び出そうになった。心臓がそのままどこかへ行ってしまうのではないかと言うほどどくどくどくと高波なビートを刻んでいる。

吉田さんが僕のことを好きだってなんでこんな売れてるのか売れてないのかわからない小説家のことを?疑問ばかりが増えてきたので吉田さんに質問をした。

「俺のどこが好きなんですか?」

今思うとなんでこんな質問をしたのかわからない。だが吉田さんは真剣に

「それは恥ずかしくて言えないけど.ぜんぶ」

顔を赤くしてそっぽを向きながら言ったその表情は僕の胸をときめかせた。瞬間、なにかのスイッチが自分の中で入ったのを感じた。

「吉田さん」

そう言いながら吉田さんにちょっとずつ近づくと吉田さんの方からも近寄ってきた。

「なんですか、はるかさん」

ネットリするような声で僕の名前を読んだ。

二人の距離はもう空き缶を横に並べた距離しかなかった。ドキドキがどんどん強くなり吉田さんにも聞こえてしまうんじゃないかと思うほど鼓動が強くなってきた。すると吉田さんはビールをもう一本あけ一口飲み僕の顔に顔を近づけてきた。僕は抵抗できずそのまま吉田さんからの口から口へのビール供給を受け入れてまった。ジガジガの抜けたビールはただただ苦かった。

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吉田さんと打ち合わせ はるき @yasudaharuki

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