ありがちな主婦の憂鬱を非日常的な文脈で彩った佳作

おもしろかったです。

なにかを選ぶことは他の選択肢を捨てることで、多くの人はパッケージ化されたわかりやすい選択肢を選びがちです。将来を予想しやすいから、自分で考えなくていいから、そういった理由なのでしょう。

主婦も人生の選択肢のひとつで、家庭と子供がいる時点で夫が無職だとか借金まみれとかDVとかでなければ人生勝ち組のはず。それでも満たされないものが残るのは、感受性の問題か、捨てた他の選択肢への未練なのか……

自己否定は貧乏ゆすりのように死ぬまで直らない癖なのかもしれません。ほら、気がつくとまた貧乏ゆすりしている。
それを上回る肯定力を持つ相手とつきあって貧乏ゆすりしながらでも前に進むか(そのうち直るかも)、同様に貧乏ゆすりの直らない相手とつきあって滅びの美学に酔うか。人生は選択です。

せっかく文章力があるのですから、高みを目指しつつ耽美に滅んでいただきたい。ふたりで貧乏ゆすりしている様子も、それはそれでおもしろいですが。

ねっとり濃厚な文章はいつも通りに読者を酔わせます。でもおそらく一番酔っているのは作者自身なのでしょう。アル中のバーテンはおもしろいかもしれないけど、うまいカクテルは作れなさそう。

タイトルがもったいないですね。ここで引く人は結構いると思います。