第2話 宇宙へ
東京スカイツリー。かつては電波塔だったというそこは今では宇宙港として栄えていた。22世紀頃は軌道エレベーターだったというランドマーク情報を見ながら朝永は少女を探す。
「よし、少女のアイコンを検索してくれ」
指示を出すと一瞬で少女の居場所が表示される。
「何でこんな所に……」
画面から転送を指示し塔の最先端に登る。
「こんなところに呼び出して何のようだ?」
少女は無言だった。チャットを見ると既に量子情報が送りつけられていた。朝永は何も言わずそれを展開する。
「え、これは……」
宇宙に関する情報がそこには広がっていた。この宇宙そのものの波動関数を解き明かすという科学者の悲願。それがついに達成されたと。しかしその結果は。
「これを知らしめるためにこの電波塔を選んだ……?」
少女は首を横に振った。
「じゃあ」
「何とかしたいと思わないの?」
少女が初めて声を発した。
「わたしは愛理須。チャットでは入力しにくいからカタカナでいいよ」
言いながら少女はIDを渡してくる。
「じゃあこれは俺のID」
言って朝永もIDを渡す。
「んで俺にどうしろと」
「宇宙に出て」
愛理須が渡した情報には確かにこの記述があった。宇宙全体の波動関数における状態は有限だと。つまり、この宇宙にはもはや自由意志は存在しない。
朝永が宇宙に出ることに同意するのに時間はかからなかった。宇宙滞在時間が取得に必要な資格もあるし、宇宙に出たと言うだけで自分のアイコンが青く輝くからだ。
「アイリスのアイコンが光ってる時点で気づくべきだったな」
「夢中になってたでしょ」
朝永の実体を量子情報に分解する。それを惑星軌道ステーション上に転送し、現地で再構築する。これが23世紀の宇宙旅行だった。旅程は一瞬で終わった。
ワールドデストラクション ザード@ @world_fantasia
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