手の届かぬ宝物

aoiaoi

手の届かぬ宝物

あなたは

私の心の奥など知らず、私に微笑みかける

あなたの愛する人と手を取り、微笑み合い

その微笑みのまま、私を見る

私に向けられた優しいそれは、何の意味も持たない空の眼差し



どんなに欲しくても、得られない

あなたの眼差し

あなたの微笑み

一秒たりとも

あなたの心の中が、私だけになり

あなたの眼差しが、私だけを捉えることなど

起こり得ない


そう知りながら

私は、あなたの側にいる

見ているだけで幸せ

あなたの幸せが、私の幸せ



そんな綺麗事

一体誰が本気で口にするのだろう



私を決して見ないあなたなど

忘れたい

離れたい

あなたになど

最初から会わなければ



憎しみにも近い——

これは、紛れもない恋




どんなに手を伸ばしても、決して届かない

この痛みは、永久に

私の中で

輝く



これは、決して輝きを失わない恋




想いが叶い、やがて色褪せる

そんな恋よりも


もっと甘く、苦く、生々しい痛みを持って——

私の中で、生き続ける恋。




決して手の届かないところで輝くあなたは

この恋は


永遠に、私の宝物。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

手の届かぬ宝物 aoiaoi @aoiaoi

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ