日本にたった3人しかいない、エア・スイミングコーチにインタビュー

高秀恵子

エア・スイミングコーチにインタビュー

「朝からこんにちは!」をご覧のみなさま、今朝は日本に3人しかいない、今話題の新スポーツ、エア・スイミングのコーチの白羽裕子さんにインタビューします。


エア・スイミング、流行ってますね。

近頃はビルの屋上などで地面と平行になって泳いている方を見かけます。

エア・スイミングのルールですが、簡単にご説明しましょう。

まずウッドフロアを助走し踏切地点でジャンプします。そのまま身体を地面と平行状態にすれば身体は浮きます。この浮いた状態で泳ぐように足をバタつかせたり手を動かして漕ぐと前進します。そして墜落する前に着地します。

判定は、飛行する高さ・滞空時間の長さ・飛行距離、そして着地の美しさの4点でポイントをつけます。


では早速白羽コーチにインタビューを始めます。



—白羽コーチがこのスポーツに興味を持たれたのはいつですか?

「まだこの競技が確立する前のことです。中学校の体育の授業で走高跳がありました。私はこのとき偶然に自分の身体が地面と平行になって浮きました。私は前進するため泳ぐように手足を動かしました。すると滞空時間が長くなり前進できたのです。しかし、この時は着地方法を知らずそのまま墜落しました。担当の教師に『真面目にやれ!』と叱られました」


—まさに草分けの者ならでの苦労ですね。

「はい。その後、海外ではスポーツとして確立していることを知り、自分で練習施設を作りました。最初の練習施設は地面に大きな穴を掘り、そこに走り高跳び用のマットレスを置き、土の地面で助走と踏切のジャンプをしました。この当時は着地の練習法が分かっていなかったので、いつも墜落ばかりしていました」


 近年の動物実験では、猫・馬・ネズミなどの動物も、ジャンプ後に地面に『浮く』ことがあきらかになっている。


「本来、人間はそして哺乳動物は、空間を浮いて飛ぶことが、というよりも泳げることが分かってきました。しかし着地は困難です。動物実験でも多くの動物が、そのまま墜落し、安楽死させざるを得ない状況にもなりました」


ーつまり飛ぶのは簡単だが着地が難しい

「そうです。飛べないと信じられていた動物が飛ばなかったのは、実は着地するときの危険性を本能的に察知してのことだと考えられています。

哺乳動物で空を飛ぶものは、ムササビやヒヨケザル、あるいはコウモリなど全て木の枝などにつかまって飛び終えるものばかりです。近年になって鳥類の翼も、飛ぶためではなく着地するための装置であることが判明しました」


—ではなぜ、人間だけが翼を持たずに着地することができるのでしょうか?

「鳥類には発達した中脳があります。対して人間には発達した大脳とその出先機関である小脳があります。人間の場合は、飛ぶことへの恐怖心を克服し、『必ず飛んで浮けるのだ』と理性で信じることですね。また科学的理論に基づいた着地方法もあります。きちんとしたコーチについて練習をすれば、健康な方なら水泳をするように飛ぶことが可能になります」


—白羽コーチは大学は理学部を卒業されたのですね。

「人間はなぜ飛べるのかを研究するために理学部を選びました。エア・スイミングについてはまだまだ現代の科学では説明のつかない部分もあります。

古典物理学ではもちろん、量子力学でも不明な点があります。今のところ、『半重力』や『偽の真空説』が有力視されています」


—最後にドローンや人工衛星がある現代、人間が自力で飛ぶ意義はどこにあるのでしょうか?

「電車や車があるのになぜマラソンをするのかを問う人はいません。もし理由があるとすれば、それは飛ぶことが大変気持ちがいいからです。

練習初期では、恐怖心ばかりが先立ち、飛んでいるときもウッドフロアやスポンジマットしか見えるものはありません。

しかし、飛ぶ、そして着地する方法を身に着ければ、平らな地面がある所ならどこでも低空ながら飛べるようになります。

かつてフルマラソンのタイムは2時間でしたが現在では1時間です。

今後、理論や訓練法が発達すれば、今のような身長より低い位置で飛ぶのではなく、より高く、より長い滞空時間で空間を漂えるようになるでしょう」


—今日は貴重なお話しをありがとうございました。

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