玉座を求める熾烈な争い(文字通り)

主亡き後の王座を狙う様々な思惑を描いた戦記は数多い。
スチームパンクの世界観をビークルで駆け抜けるレース物も多い。

だがそれらを混ぜ合わせてひとつの作品にするなどそうそう思いつくものではありません。

あまりに個性の強いそれらの要素を、出オチにさせずに使い切り、緻密な設定、ハードボイルドなキャラクターやロマンあふれるガジェットで繋ぎ合わせる。
戦記物とSFって調理次第でこんなに合うのかと、その構成力と文章力には感嘆しきりでした。
たとえるのなら癖の強いスパイスをまじめに研究し、独自の比率で調合したらひとつの完成した味としてまとまったカレーのよう。

好奇心の強い天才児、北の領主、最後の王族を弑逆した軍人、自由と解放を押し付けるために戦う元奴隷たちななどによる、熱帯の森林地帯から始まった熾烈な争いと世界が、話が進み、真実が明らかになっていくにつれて一つのところに集約しつつあって、それと反比例して期待は広がります。

話題性、意外性、そしてその屋台骨を支える地力は、今後さらに躍進するであろうと見込んでいます。
この疾走する王道ファンタジーに、乗り遅れることなかれ。

このレビューの作品

疾走する玉座

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