おそらく主人公は妊娠した女性、そして銀河鉄道の夢で我が子を失ってしまう。それは中絶手術の最中のことだが、銀河鉄道の夢が現実の冷淡さを表現している意味深な作品です。主人公はその後、どうなるのでしょうか・・・。
最初は幻想小説だと思ったんですよね……。鮮やかな夜空。不思議な世界。そこを走る一筋の列車。乗客。車掌。不穏な空気を感じた頃にはもう遅くて、一気に現実に引き戻される。その落差、貧血になって失神しそう。鮮やかな筆で重たい現実を描いた作品です。
『カムパネルラによろしく』読了時、タイトルの意味が明瞭になります。『銀河鉄道の夜』へのオマージュ。それだけでは言い尽くせない魅力が溢れる作品です。魂を水辺に置くときの遣る瀬無い想いに、背中が、ひんやりと切なくなりました。
重いテーマを幻想的に表現。銀河鉄道の夜からは想像できないテーマです。うまいです。
彼女の乗る列車は、特別なものでした。私も同じような体験をしたもので、ある所へ謝罪に参りました。彼女の気持ち、旅路を急ぐように、そして、永遠のあるできごとが、私の経験と重なるようで、胸が詰まる思いをしました。これは、私にとっても必要な旅だと思います。そして、勿論彼女の人生の一角でもあるでしょう。是非、ご一読ください。
センシティブな内容を幻想的な雰囲気で表現していて、直接的な表現がないにもかかわらず、心にグッと刺さるものを感じました。