第107話 最強の盾
「モモカ!アンタ、主なんでしょ?なんとかしなさいよ!」
討伐イベントが始まって3日目。餃子バーでギルド業務をしていると、金の匂いに釣られたのか招かざる客がやってきた。
「アンタ、育ててやった恩を忘れた訳?ほんとグズが早くなんとかしなさいよ!」
「ちょ、ちょっとお待ち下さい!」
対応しているバイトの受付嬢を差し置いてモモカにクレームを入れているクレーマー女性。恐らく前のパーティメンバーだ。ぞろそろと十人ほどとギルドに詰めかけていた。
とりあえず大声に怯えてしまったモモカの前に出る。
「冒険者ギルドの斉藤です。今回の創成川イースト界の討伐イベントは、ギルドとの委託契約で行われているのでこちらを通してください。例外はありません」
「何よおっさん!アンタには言ってないわよ!」
お、おっさん⋯⋯確かにもう30代だし大学生から見たらおっさんなのだろうが、改めて面と向かって言われると心の深いところにぐさっとくる。
「決め事を守れないのなら、お引き取り下さい。営業妨害です」
「偉そうに何様よ!冴えないおっさんは引っ込んでて!」
ただのおっさんから冴えないおっさんにランクアップだ。これも、否定できない。
「一応、これでもギルドの代表なんですけどね」
「代表っ⋯⋯?!」
顔色が変わった。社会経験が少ない人には意外と偉そうな肩書きが効く。偉いのは精々社内だけなのだが。
「分かっていただけましたら、お引き取り下さい」
「私達はただ討伐イベントに参加しに来ただけで⋯⋯参加登録すればいいんでしょ!」
「申し訳ないですが、もう参加枠は埋まってしまいました。次回の参加をお待ちしています」
「チッ、モモカ!調子に乗ってるとまたロストしても知らないから!」
「ちょ、調子になんて⋯⋯」
そう言い捨てて去っていく女性多めの若者たち。大学生の混成チームだろうか。ホクダイ界のトップチームはすでに参加済みなので一線級ではなさそうだが⋯⋯。
実のところ、札幌イースト合同チームと関東連合チームが空いている枠をとりあえず埋めているだけで空けようと思えば空けれるのだ。だが、空けてあげるかどうかは別問題だ。問題行動の多そうなチームを優遇する必要などない。
「さ、さいとーさん、大丈夫でしょうか?」
「乱入に注意を出しておこう。それに俺とモモカがいれば大丈夫だろう?」
「はぁ⋯⋯まぁ⋯⋯」
モモカは、界の主だ。
そして、主より強いモンスターは界に設置できない。逆に言うと今のモモカは、勝てるかどうかは置いておくとしてもそこらのレイドボスより数値が上だ。
EPを日々消費する鍛冶場やNPC商人を設置しているとはいえ、順調に一線級プレイヤー達が集まりレイドボスも討伐されているのだ。増え続けるEPで人を雇ったっていい位の余裕がある。
周知済みだが乱入や横殴り、交代時間を守らないなどのルール違反者は討伐対象だ。
討伐するのは、この界限定ではあるが最強の盾モモカと遠距離なら敵なしの俺、そして周りの参加者だ。
実際に問題行動を起こせば、思い知ることになるのは奴らなのだから心配など不要なのだ。
しかし、凄いね上級界の主って。
札幌でクソゲーを攻略するお仕事ですが、残業代は出ますか? nov @9raso
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