第106話 孤高の魔法使い
なぜ俺がレイドボス討伐イベントに参加せず、裏方のギルド仕事だけをしていたかと言うと、『獄怨の杖』をうっかり再び+5まで鍛冶で強化してしまったことが大きい。
「それはそうとして」
威力を試してみたい。その欲求は強かった。
創成イースト界のレイドボスは品切れであろうからと選んだのは、ホクダイ界の食べ残しであるオークソルジャー。恐らくだが中級難易度クラスのプレイヤーは意外と集まりが悪いため食べ残しがいるはずだ。
「……いた」
遠目に見える威風堂々。なかなかに強そうな出で立ち。3mくらいに見える大きな二足歩行の豚が槍を携え佇んでいた。
かの敵との距離は200mと言ったところか。こんな北大のど真ん中を出現位置にするとは他の迷惑にならないんだろうか。
北大の中央ローンをぎりぎりまで南下し距離を取る。
基本的には
―STATUS―
Name: さいとー
HP: 150 / 150
MP: 434 / 400 + 34
LC: 110
EP: 15764
―Skill―
火矢 cost: 13(15 - 13%) 詠唱破棄
……
E: 『獄怨の杖+5』(被ダメ軽減無効、
E: 『賢者のローブ+5』(被ダメージ12点減少、MP自然回復率+55%、MP消費軽減+13%、最大MP+34、重量5)
今の俺ならコスト13の
射線と逃亡ルートの再確認を行い、息を吸う。
「……
吐き出したトリガーワードで
追撃の準備は……不要だった。オークソルジャーの姿は影も形もない。あったのは
少なくとも中級難易度で活躍するプレイヤーが2、3組のレイドチームを組み、数時間かけて削っていく中級レイドボスがたったの一撃。強化した値も強化に使ったEPも吹き飛んでしまうがこの威力だ。
「……マジか」
スマホからピロリと通知音が鳴りメッセージが届いていた。システムからだ。
『称号、
「……称号なんて制度あったんかい」
「……誰が使うんだこれ……」
ユニーク装備の次はユニークスキルが当たってしまったが、使いどころのいまいち微妙なスキルに困惑してしまう。敵に囲まれた時くらいにしか使えない上に、長々と詠唱していては使えない。消費MPからして回数が使えないため詠唱短縮を取るのも一苦労どころではなく、詠唱文が長いと詠唱失敗の確率も上がってしまう。
とりあえず放置して獲得したEPを見ると30万近く入っている。これは美味しい。そして、ホクダイ界の討伐報酬は3万円が設定されていた。二重に美味しい。
思わぬ成果に思わず口角が上がってしまう。
昼間ギルドで隙を見て鍛冶をして、また明日狙ってみよう。
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