零坂かく語りき

グリード・A・ハスレイミーの作品を初めて読んだのは、なぐも文庫の『SFの祭典 傑作SF作品集』というアンソロジーに収録されていた『緑色の背の高いあれ』という作品なんです。中学生くらいの頃にこれを読んでひどく衝撃を受けたのを覚えているんです。中身自体は、自分にしか見えない緑色の何かに監視されていると感じている青年の1日を青年自身が独白しただけのものなのですが、気が狂い出してるのか思考に論理性がなく、それが子供心に非常に恐ろしさを感じたんですね。筋が通っていないことに自分さえも気づいていないことが。

それからハスレイミーに興味が湧いて、彼がかなり埋もれた作家であることを知ったんです。そこから、古本屋を巡ってハスレイミーの作品の載ったSFマガジンを探し回る旅が始まったんですよ(笑)

とても楽しかったです。


ハスレイミーマニアとして、翻訳家の春川由紀夫さんがいらっしゃいます。『緑色の背の高いあれ』も含めてハスレイミーの日本で翻訳された作品は彼の訳によるものがほとんどです。ですが、ハスレイミーの全盛期である1982年(1番活動が盛んだった時期)の5月に亡くなってしまったことによって、それ以降のハスレイミー作品はほとんどが訳されないままになってしまったんです。(『rainy days』とか『back!!』とか)

それほどまでにハスレイミーはマイナー作家だったのです。

それ以降訳された作品としては、ハヤカワミステリーマガジンに載っていた三上隆臣・訳の『奪われた埋葬』と『ドッペルゲンガー伝説殺人事件』とどちらもミステリ興味の濃いハスレイミー感の少ない作品ばかりでした。


数ヶ月前、ある幸運によってハスレイミーの未訳短編の載った雑誌を入手しました。もうとても嬉しくて雑誌を抱き抱えて小躍りしたのですが、私は英語がよくわからないので翻訳にかなり時間がかかりました。

なのに何故カクヨムに載せるのか。

何故売らないのか。

それは簡単です。

無料で読めることで、皆様にハスレイミーを知っていただきたいのです。

これがハスレイミーのベストではないということは皆さまご理解くださいませ。

以上、零坂より愛を込めてでした。



(この小説及び解説に登場する作品名、作者名、人物名等はほとんどがフィクションです)

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なにかが感染った mystery of toilet ソメガミ イロガミ @117117A

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