ep.5

 ◇ ◇ ◇


 何十年か経過し、俺とリリベルの周りはより一層賑やかになった。

 子供50人、孫120人、曾孫10人とアフリカの村長ばりに子供を量産。

 集落から村へ、村から町へ、そして、いづれ国が出来るのだろう。


「大婆様! これ、取って来たの!」


「......そうかい。ありがとよ。ブラック」


 銀色の髪に赤と金の碧眼の眼。

 曾孫のブラックはリリベルとよく似ている。

 髪色が金色であればリリエンが神様だった頃と瓜二つで、リリベルはブラックをとても可愛がっていた。


「体調はどうだ?」


「えぇ。今日は少し良いみたい」


 シワシワの肌に、老人特有の錆びた声。

 この頃のリリベルには神様としての性質はなく、身も心も完全な人間だった。


「今日は天気が良い。散歩に行きたい」


「じゃあ、車椅子を持ってこよう」


 俺とリリベルが魔法やスキルを使えるのと同様に子や孫にもそれは受け継がれた。

 ただ、リリベルの人間化に伴い、遺伝子の変化があったからか、子供たちの魔縁量には個体差があり、最後に生んだ子は魔力を一切持っていなかった。


「私が創ってあげる!」


 快活な声でブラックは右手をかざし、ボソボソと口を動かすと光の粒が集まり、車椅子を具現化。


「ありがとね。ブラック。お前は本当に良い子だ」


「えへへ」


 得意気な顔でリリベルに満面の笑みを向けるブラック。

 覚醒遺伝というやつなのだろうか、曾孫であるブラックは何故か魔法を使う事が出来た。


「昼までには戻ってこよう。今日はロイスとブロスの誕生日だから」


「そうね」



 ◇ ◇ ◇



 風が遊ぶように頬を撫で、春の香りを運ぶ。

 鳥や小動物は木々の合間を通り抜け、小川の魚たちは群れを作り泳いでいる。

 人間や亜人がいないだけで、この世界は俺が異世界に転生して来た時と同じだ。

 あの頃は、心が荒んでいたせいかこの穏やかな環境を気付く事は出来なかった。


「私が死んだら、あなたは元の世界に戻れるのかね?」


「あー、そういえば、そんな設定あったな」


 すっかり忘れていた。

 まぁ、今となってはこの生活に満足しているし、戻る戻らないが選択出来るなら戻る必要はない。


「一つお願いがあるんだ。聞いてくれるか?」


「ん? 言ってみろ」


「お前が故郷に戻る事があったら、私も連れて行け」


「連れて行く? 戻るか分からないんだけど?」


 俺がそう言うと、リリエンは耳を真っ赤にし、何やら不満気な表情を浮かべ。


「か、勘が鈍いんだよ! バカが!」


「え? あ、その、一緒に居たいとかそういう系の話?」


「バカ野郎! 口に出すな!」


「えぇ~......」


 いせかいてんせい。

 それに憧れる人は多いだろう。

 ハーレムを作り、魔王を倒し、富と名声を手に入れ......。

 そんな人生もきっと楽しいだろう。

 ただ、ハーレムを作らなくても、魔王を倒して称賛されなくても別にいいじゃない。

 これは、これで案外幸せ。

 神様に束縛される人生も案外悪いもんじゃない。

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神様と過ごした100000000年間の話 おっぱな @ottupana

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