ep.2

「それから、桃の太郎君は鬼を退治しに......」


「えぇえい!!! 幸四郎! お前、また、フワフワ浮いて! ダメだろ! 話が入って来ないわ!」


 今、俺とリリベルは絶賛宇宙空間で生活している。

 チートスキルのおかげで酸素・魔縁まえん・水分・食料などの生命維持に欠かせないものを摂る必要がなくなった事もあって、惑星を元に戻すって案すらなかった。


「しょうがないだろ。話に集中すると重力維持シュベア・ハルテンすんの忘れちゃうんだから」


「ん? 重力維持? 何だそれは?」


「ん? いや、重力維持シュベア・ハルテンというスキルがあるよね? それを発動しないとこの無重力空間で地に足を着く事は出来ないだろ?」


「??? どういう事?」


「......リリベルはどうやって今まで生活してきたんだ?」


 数百年経った後に知った衝撃的な事実。

 リリベルはスキルや魔法というものを一切持っていなかった。

 というか、魔法やスキルを発動する為に必要な魔縁すら知らない。

 今での戦いで炎、氷、風、雷、水などの五属性魔法も、腐食、暗闇、呪い、天罰などの特殊魔法・スキルも使いこなしていたよね?


「うーん? あれ? どうやってだっけ?」


「......」


 そこで、俺、やっと気づいてさ。

「あれ? こいつ、クソ強いんじゃね?」って。

 俺は、リリベルの攻撃を目でみて、対応する魔法やスキルを頭で瞬時に考えて出す訳よ。

 こんま一秒以下のレベルでの話ね。

 ただ、リリベルは魔法やスキルを考えないで発動しているんだよね。

 人間でいう脊髄反射ってやつ?

 それに気付いた時はちょっと怖かったよね。

 だってさ、魔法やスキルを知らないのにこれだけ強いって事はさ、魔法やスキルについて少しでも学んだら今よりも強くなるって事だからさ。

 伸びしろヤバイじゃない。

 こちとら、レベル上げまくって、魔法やスキルをほぼ全て会得したレベルカンストプレイヤーだからね。

 いや~、参ったね。

 で、流石の俺も思ったわけ。

「リリベルを強くしたらマジでやられかねないから嘘でも教えておくか」って。

 幸いな事にリリベルは素直だったから、俺の言った事は全て信じるから。

 読心術ファフナーみたいなスキルをお互い持っているけど、読心術ファフナーを無効化するスキルもお互い持っていて、全てが打消しあって能力無効化してたから、俺の策略がバレる訳もないし。


 で、それから、俺はリリベルにある提案をしたのよ。


「Hmmm。このままだと不便だな。よし、あれを元に戻すか」


「あれ? 私達の下に転がっている石ころの事か?」


「おいおい。自分が創った世界だろ。忘れるなよ」


「アハハ! そうだった!」


 世界を創ったんだから、世界を元に戻すのも容易い事。

 それに、俺にも創造物を具現化するスキルディ・エンボディメントというものを保持している。

 数百年、数千年の長い月日がかかるかもしれないが、二人でやれば何とか時間短縮には______。


「ほほいのほい!」


 ポン!


 ん? ポン?


「ほれ、出来たぞ」


「ん? 何が?」


「何がって! 幸四郎が直せと言ったのだろう?」


 いや~。

 タマゲタよね。

 下見ると直ってるんだもん。

 粉々になった惑星がさ。

 君たちみたいなファンタジー脳なら何となく理解してくれると思うけど、創造するスキルって単純な物ほど短時間で出来、複雑な物ほど時間を要するんだよね。

 で、惑星なんて複雑な物の最高峰な訳じゃない?

 だからね。

 めっちゃ時間を喰うものだと思ってたんだよ。

 それを「ほほいのほい!」の一言だからね。

 心底思ったけど、俺、よくこんな化物と戦っていたなって。


「ほらほら! 幸四郎! 行くぞ! 地球に!」


「地球?」


「名前だ! あの惑星の!」


 あぁ、そういう事。

 本当にこいつ地球好きだなと無邪気な幼女を見ながら、俺はリリベルに手を引かれながら新地球に舞い降りた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る