「自分は誰にも必要とされていないのではないか」、「自分が生きてきたこれまでに意味なんてなかったのではないか」、という疑問を抱えた時に読みたい一作。
もちろん現実はこの作品ほど上手くは回らないかもしれないし、答えを見つけてもそこに続く道は並大抵の努力でどうにかできるものではないかもしれない。
けれども、自ら軽んじている身の上が誰かにとってかけがえのない存在だったりするのかもしれない。自分のこれまでが結実する何かがあるのかもしれない。夜に溶けるには、まだ少しだけ早いのかもしれない。
長瀬夜子。平々凡々な高校生を自認する三田村真也が「夜の化身」に見立てた彼女は、コンビニに行くし、進路調査用紙は適当に書くし、カップ麺を食べてネギを手で拭う。そして些細なキッカケで知ったバンドの音楽をアルバム全部聴いているような、いたって普通の女の子なのだ。