第9話 そして再び
「ねえ、タカヒロさん、逢いたいんでしょ?あの人に」
「いや別にいいんだ、もう・・・ん?待て・よ・・・
ユカ!お前、さっき一緒に居た男の子知ってるよな?」
「知らない、て言うか他のクラスの男の子だよ」
「じゃあ同じ3年生ってことか?どこの高校に行くのか?
明日聞いてもらっても・・いいか・・なぁ~?」」
「やだよ、ばっかじゃないの~!何で他のクラスの男の子に、
どこの高校に進学するの?なんて聞ける訳無いでしょ!」
「あぁ、そうか、それもそうだよな・・・」
「でもさぁ~、殆どの生徒はみんな地元の県立高校に行くよ」
「ん?そうか、じゃあ、ユカも当然そこに行くんだよな?」
「うん、まあそっかな?一応これでもユカは学年トップで、
県内一の難関校に行ったらって、担任が勧めてるんだけど」
「地元が一番だ!近いし、電車やバスも要らないし!自転車
で通えるし!朝はゆっくり、夕方も早く帰って来れるし!」
「パパは自分の初恋の人に逢いたいから、その人の子どもと同じ
高校に行かせたいだけでしょ?ばっかじゃないの!」
「違うって言ってんだろ!ユカの為を想って言ってんだぞ!」
「タカヒロさん!直ぐ興奮すんだからぁ~、殆どの生徒さんは
地元の県立高校に行くって話だから、ユカもそうでしょ!」
「浮気パパ!初恋のゆうこさんと父兄会で逢ったらどうすんの?」
「えっ?あっ!おぉ!ユカぁ!お前は、このバカたれがぁ~!」
「タカヒロさん、逢ったらどう?お茶くらい誘って上げたら?
喜ぶかも~、ふふふふ~」
「気持ち悪い奴らめぇ~」
でもこれからは高校の父兄会で憧れの初恋の裕子さんに遭える~!!
そう思うと、ずっと子供の頃から暗めでマイナス思考だった僕の
アタマの中がパア~ッと明るくなり、春の花が満開に咲いたように
ルンルン気分に舞い上がっていた。
僕はなんか嬉しくて、嬉しくて、ワクワクして笑みがこぼれていた。
可笑しいな、不思議な感覚だな。
愛する妻や子供が居るのに、やっぱり初恋の人って別の次元に居る、
心にひっそりと咲き続ける”高嶺の花”エーデルワイスのような
そんな感じなんだろうな・・・
「裕子さん・・・ククク、楽しみだなあ~~~」
「ねえママぁ!またパパを見て!デレデレ、ニタニタ笑ってるよ、
超キモ~!!」
「ユカ!放っておきなさい!パパは昔からオカシイ人なんだから」
「じゃあ何で、ママはパパと結婚したの~?」
「こんなパパだけど、心が綺麗で子どもみたいに無邪気なとこが
あって、優しいからね・・・」
「へえぇ~~~、ぷっ、キャハハハハ~~~」
~~~僕は相変わらず、夢うつつで~~~
裕子さんに虜にされた心の中は既に ”うわの空” ~~~
「ゆ、裕子さぁ~ん~~~~~~~」
その時、僕は子どもみたいに純情で無邪気にはしゃいでいた、
そして15歳の少年だった、あの頃に戻っていたのであった。
初恋のゆうこさん 小川貴央 @nmikky
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