第8話 帰りのみち
やがて夕陽は沈み、辺りは黄昏色に染まり始めた。
西の低い空はオレンジ色に、高い空には青い夜空が
広がっていて、その境目辺りに一番星が光っていた。
クルマは中学校の直ぐ近くにあるコンビニに着いて
家内と長女はお握りとウーロン茶を買いに店内へと
入って行った。
俺もタラコお握りを買ってきて~!と言いかけたが
食欲も無く、温かいウーロン茶だけを頼んだ。
僕もドアを開けて独り駐車場に降り立った。
夕暮れ時のコントラストが美しい、まるで幻灯機に
投影された夕景に街並みの影絵が浮かび上がっている
ような幻想的な情景にしばらく見とれて佇んでいた。
あの頃の下校時間、生徒たちが燥ぎながらも一目散に
家を目指し、帰って行った場面が懐かしく甦った。
二人が買い物して戻って来た。
何故か「おい、中学校の前を通って帰ろう」と言った。
家内はただ黙ってクルマを中学校に向けて走り出した。
長女が「パパ、さっきの女の人に逢いたいんだ?でしょ?
ねえ、ママ、さっきね、ユカが個人面談終わってパパの
クルマに乗ったら、ゆうこさん~とか泣きべそ掻いてさ
デレ~っとしたアホ面になっててさ、超可笑しかったあ」
「ユカ!何てこと言うんだあ!そんなんじゃねえ~!」
家内はそれを聞いてて静かな口調で切り出した。
「パパの初恋の人なんでしょ?ゆうこさんって」
「あ、あぁ、まぁ、そのぅ・・・」
「あっそっかあ、ユカが来る前にご対面~だったんだあ」
「会ってない!、い、いや、会った・・・いや、違う・・・」
「どっちでもいいじゃん、とにかくパパ、浮気、浮気ぃ~~」
「こら!からかうんじゃない!そんなんじゃな言ってんだろう」
「タカヒロさん、頭痛薬飲んで眠り込んで夢でも見たんじゃ?」
「うん、そうかもしれないな、夢うつつだったのかな~?
実はな、お前たちが学校に入って行った後な、彼女と母校の
周りをお散歩して、写生会やった学校の目の前にある田んぼの
あぜ道を歩いたり、校庭のベンチに腰かけて二人でコンビニで
買って来たお握りを食べたんだ、アレは夢だったのかな?」
「パパ、浮気、浮気い~~!」
「ユカぁ~、うるさい~!」
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