若手の営業職、渉が気になるのは、営業事務の女の子茅子。仕事を覚えなければいけないのはもちろんですが、それはそれとして、気になる気持ちは止められません。果たして、恋と仕事は両立できるのか?
恋愛が主軸の本作ですが、営業職や事務などの仕事に全く自分にとっては仕事の苦労や達成感を少しずつ覚えていく渉の姿が新鮮で、お仕事小説としても楽しめました。キツイことを言われて心折れそうになった時などは、思わず頑張れとエールを送ってあげたくなります。
ですが、そんな疲れた心を癒してくれるのは、一読者のエールではなく、気になる相手茅子さん。できることなら、もっと彼女の事を知りたい。もっと距離を縮めたい。それは、場合によっては仕事以上に重要な案件なのかもしれません。
しかしこちらも、仕事同様順風満帆とはいかなくて……
恋に仕事。失敗や悩める部分も多いけど、めげずに頑張れ渉君!
渉くんは、同じ職場で知り合った茅子ちゃんに惹かれて、お近付きになろうとします。
紆余曲折の末、親密な関係になったと思ったところで、茅子ちゃんからのカミングアウトに、途方に暮れてしまう渉くん。
茅子ちゃんの抱える事情は、渉くんの想像の範疇を超えるものでした。
渉くんは茅子ちゃんの信頼を勝ち得て、家族になることが出来るのでしょうか?
オフィスラブコメという体裁を取りつつも、ある社会問題について鋭く切り込んでいます。
おそらく、一般的にはそれほど詳しく知られていない事柄でしょう。
やや重いテーマを含みつつも、作品としては基本的にコメディタッチで綴られていて、深刻にならずに読めます。
なお、概要欄の参考記事、上のふたつが『児童養護施設について』、一番下が『里親制度について』の記事となっております。
伝えたいメッセージは、チョコレートでコーティングするというのが、奈月沙耶様のお考えのようですが、その目的はある程度達成出来ているかと思います。
あと、お仕事小説としても高い水準を保っております。
小説ごとにお仕事の内容が変わるのに、内容が詳細なのはどういうことなのか?
さすがはカクヨム界の竜王様でございます。