第11話 京都へ

 母静子は、私を忌み嫌うようになっていた。私がいる場所は、なにかザワザワするのだという。なにか起きる時には、必ず私がいる。

そして、再婚し、私を邪魔者扱いするようになった。少なくとも私はそう感じたし、今でもそれは変わらない。

気晴らしに出かけても、私のことを知っている大人たちが、静子の耳に入った。

監視されているようで、とても嫌だった。

 新しい父のことを「お父さんと呼びなさい。」と強制された。

18歳の私は、当然、反発もした。

姉はその頃、既にバレエ団に属し、東京に住んでいた。


 姉も私も大人の仲間入りをした。

『お父さん』が、父が建てた家を壊し、新しい家を建てた。


「一番いい東側の部屋をあげるから。ここは、跡継ぎの部屋なんだよ。」


窓から見えた景色は、江戸時代からあると言われていた古いお墓だった。


私は、どうしても馴染めなかった。居心地も悪かった。

どうしても食事が喉を通らなくなった。


幼い頃から考えてみても、珍しく静子がご飯を作ってくれたのだが、食べることができなかった。すると、突然、ヒステリックになり、静子が罵声を浴びせてきた。


「ここは、おまえの家じゃない。お父さんとお母さんの家だ。出ていきなさい。」


 そう言われて、私は京都へ移り住むことにした。

4年近く京都に住んだ。恋人と一緒に、思いつく場所には行ける限り行った。

北区にある大徳寺の近く、紫野という場所に住んだ。

歴史は苦手だったが、神社仏閣は幼い頃から大好きだった。一生を通じての友人もできた。とても居心地が良かった。もう静岡に帰るつもりはなかった。


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せきあぐる 昔語りと 世に伝ふとは @aka1335

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