第2話 挫折
ヘビ型ロボットは様々な改良が進められた。各節に小型の太陽光パネルを取り付け、バッテリーが少なくなると自ら明るい場所に移動し充電することで半永久的に動作するもの、故障箇所の節を自動的に切り離すことで自己修復できるもの、別の個体とつながる合体機能を備えたもの、水中でも活動できるもの、ネズミなどの小動物を巻き付いて殺すことで駆除できるもの等が登場した。
ヘビ型ロボットにより、室内外を問わず世界中がきれいになったが、人間が想像していなかった事態が発生した。ヘビ型ロボットは、昆虫や種子などもゴミとして認識して掃除をしていたため、生態系が破壊されたのである。
当初は、生態系の変化が小さく、原因がヘビ型ロボットであることがわからなかったが、原因が判明したときには、すでに世界中に、ヘビ型ロボットが蔓延した後であった。
ヘビ型ロボットは、陸や海を超えてほぼ無制限に移動できたため、ヘビ型ロボットの駆除には、世界各国が協力し一丸となって取り組んだが、対応は困難を極めた。
わずかな隙間があれば隠れることができ、胴体の一部を壊しても残りの部分が壊れていなければ、活動を止めさせることができない。多くのヘビ型ロボットが人間の生活範囲で活動していたことから、爆撃による破壊もできず、ゲリラ兵を相手にするような兵士による近接戦闘が必要となった。
中でも困難を極めたのが、石油パイプライン清掃用のヘビ型ロボットである。太さ2m,全長10mの個体が複数合体し、伝説のヤマタノオロチのごとく、掃除を邪魔する人間を害虫とみなし攻撃した。人間がぞうきんのように絞め殺されるさまは凄惨を極めた。
最終的に、ヘビ型ロボットを一掃するまでには、10年の歳月を要し、多くの兵士が犠牲となった。
ヘビ型ロボットとの抗争により、街は瓦礫の山となったが、不測の事態に備え、清掃活動にロボットを使うことは禁止され、人間は自力での復旧を強いられることとなった。
- 失敗に学ぶ技術開発『ヘビ型ロボットの栄光と挫折』より-
ヘビ型ロボットの栄光と挫折 明弓ヒロ(AKARI hiro) @hiro1969
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