スマホの硝子が割れた日の話。

槙葉 鹿

第1話 スマホデビュー

「これが・・・スマホか・・・」


中学に上がると友達がみんなスマホを持ち始めた。


「ラインやってるー?」

「うん!ふるふるしよ!」

ふるふる?なんだそれ。

「ツイッターやってる?」

「やってる!フォローするから垢教えて!」

垢?なにそれ。よごれ?

最近、学校では聞き慣れない言葉が飛び交う。

小学生の頃はみんな「DSのソフト買ってもらったんだ」とか「家でWiiやろう」とかだった。それなのに中学に上がった途端「〇〇配信されたんだってー」「あの動画見た?」とか「この写真アップしていい?」正直、つまんなくなった。遊びに行けばみんなスマホスマホで、「かわいー」って言いながらスマホ構えて写真を撮りまくる。

「これ、すごく美味しいよ!」

「え?ちょっと待って写真に残すから」

残してなんになる。振り返るの?

今を楽しまずに過去を振り返るのが楽しいんだ──と不満に思うこともあった。


私は高校生になった。

今、スマホショップで契約を終わらせたところだ。

スマホを手にした途端「これが・・・スマホか・・・」と感動した。

画面に触れると反応する。仕組みがわかんない。すごい・・・。友達がハマる理由もわかる。

手当たり次第にゲームを入れてみたり、音楽を取り込んでみたりした。そして、ラインもツイッターもいれた。


翌日学校ですぐに友達に報告した。

「わたしも、スマホ買ったんだ」

「シズカ、ほんと!?ライン始めた?」

そう、これだ。このくだりを待っていた。

「うん!してるよ!」


登録させていく友達の数。フォロワーの数。目に見えてわかる。


「今日の写真だよ!グループに送っておくね」

共有する思い出。

『いいね!』が物語る人気度。

『可愛い』も『いいね』もこの世界の全て。

悪いものはみんなで倒す。現実よりも大きい世界が画面の奥に広がっていった。



「クラス動画とろ!」

面白そう!思い出を動画で残すのもいいな。


「俺、パス」

なんだつれないな。少しくらい付き合ってくれても良くない?


その男子は無言で教室を後にした。

「あいつ、いつもこうなんだ。ガラケー壊れたって言ってるのにスマホには絶対に変えないってさ」

このクラスでスマホを持ってないのは彼一人ぐらいだ。


「ね、早く撮ろうよ!」

「うん!」

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