第8話 お楽しみに

「これ、誰のだろう」

教室のドアの近くに定期券が落ちていた。

名前書かれていないから誰のものか分からなかった。多分この付近の席の奴の物だろうと思い近くの席の上に置いた。


□□□□□□


「俺、Cの2。圭太は?」

「オレもC班。ほかは?」

「僕、Cの4!」と篠野。

「あ。俺もおれもー!Cの3でーす」

「うぇーーい」と流れでハイタッチを交わした。

篠野ささの五堂ごどう、圭太、俺。全員男子。

「全員男ってつまんねえ」と五堂が言った。

俺を除く2人が口を揃えて「それなー」とボヤいた。俺は正直何処でもいい、こと流れ主義。


クラスは誰と誰が同じだの、カップルが同じ班になれずに嘆いていたりと騒がしかった。

「青原くん、青原くん」と城多が話しかけてきた。


「レストラン、焼きたてパンが美味しいらしいよ!」


「ホントか!?」と、つい大きな声を出してしまった。

「URL教えようか?」と言ったが何かを察したらしく「これ以上はお楽しみだね」と城多は言った。


「城多さんとサク何話してんの?席交代したくても変わんねえからなー」と圭太たちが茶化してきた。

「そんなんじゃねー」と、反論した。


「クロワッサン好きなんだね」

圭太君のも含まれてるって言ってたけど本当は全部自分のでしょ?──と城多はクスッと笑った。


「・・・悪いかよ」

決まりが悪くなって机に顔を伏せた。



□□□□□□


「うぅ恥ず・・・!!!」と枕に叫んだ。

自分でもこんなにクロワッサンを好きなのもおかしいとは思っている。ライクや、ラブを超えて、クレイジーの域だと昔言われた。


(焼きたてパンがあるってことは、クロワッサンもあるよな・・・)

そのようなレストランに連れて行ってもらったことが無いので想像が膨らんでいった。


(また、カメラ借りよう。ガラケーじゃ画質良くないし・・・)


明日なんだよな。服どうしよう。考えていなかった。適当でいいよな。いつもの服装で行こう。


アラームを設定して目をつむった。


夢の中で俺はクロワッサンを作っていた。

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スマホの硝子が割れた日の話。 槙葉 鹿 @Minazuki_uta

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