第91話

「おーい。朝倉委員長ー。朝倉委員長やーい」


 朝倉委員長はこちらを振り返らず長門さんの攻撃を避けた。こちらに気を回す余裕がないのかもしれないが、まぁ聞こえてはいるだろう。


「俺天才だったかもしれないってぐらいの名案を思いついたんだけど聞く気あるかー???」


 …なんか、今意図的に無視したような気がしたけどまあいいや。


「今きみどりさんから聞いたんだけど、朝倉委員長たちって俺に攻撃できないんだろー?ならさぁ!


 ギョッとしたように朝倉委員長が首をグルンとこちらに向けた。戦闘中にそれは大きすぎる隙となったが、長門さんも同じように俺の方を凝視していたのでセーフだった。


「俺がきみどりさんをぶっとばすから、その後に朝倉委員長は長門さんを攻撃しろー!それなら勝てるだろー?」


 よーしいくぞーと俺はきみどりさんの方を向いて右肩をぐるんぐるんと回した。それをみているきみどりさんは特に動じることなくニコニコと笑っている。


「ちょっ、待っ待って、ちょっとキョンくんストップストップ!!!」


 んー?と俺は右肩を回したまま朝倉委員長の方に体を向ける。朝倉委員長は長門さんの方を気にしつつ


「馬鹿なことを考えるのはやめて!私達は確かにあなた達に害を与えないようにしているけど、絶対じゃないのよ。人間で言う『正当防衛』みたいな状況であればその限りじゃないの!」


 と、俺に叫んだ。そのせいとうぼうえいとやらはよく知らないが、まぁ俺じゃぁきみどりさんを倒せないだろうな。殴ったとしても俺のほうがダメージ受けそうだし。


「まぁそれは冗談だ。けど、名案は本当にあるんだ。ちゃんと聞けよー!」


 遠目で朝倉委員長の心配そうな顔が般若のように変わるのを見つつ、俺は俺の思いついた名案を叫んだ。


「朝倉委員長が出来るイッチバーン強力な攻撃を、


 何か言おうとしていた朝倉委員長は、俺の言葉を聞くと口を閉じ、いつかみた感情の削ぎ落ちた能面のような顔になった。

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キョンがアホだった場合の涼宮ハルヒの憂鬱 むーらん @muuran

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