そしてラッパーになる

作者 MC三郎

目撃せよ、自分を変える熱闘劇。圧倒的に魂揺さぶるMCに、耳ヲ貸スベキ!

  • ★★★ Excellent!!!

 エピソードの目次を眺めただけで、日本語ラップをこよなく愛する方が書いたんだろうな~と思ったのですが。事実、HIP HOPやラップという表現への愛とリスペクトが徹頭徹尾に詰まっていました。ラップは自分を、自分を取り巻く世界を変える。
 僕のように日本語ラップに馴染んできた(といってもかなり日は浅いですが)人間にとっては、「こういうの読みたかったんだよ!」とハンズアップするような一編です。それ以上に、HIP HOPに馴染みのない人にこそ、その魅力を快適に紐解くのに最適な一編だと感じました。

 というのも本作でMCバトルに挑むことになるメインの女子二名(何もかも正反対)、当初はラップを全く知りません。これほど知らないって高校生も珍しいような気もしますが、それはそれでご愛嬌。
 そんな二人が、ラッパーを諦めたHIP HOPファンである主人公に、ラップを一から教わりながらMCバトルへ向かっていくという展開なので、初心者二人と同じペースでHIP HOPに入っていけるはずです。勿論ヘッズの人も、章タイトルや登場トラックになっている楽曲にニヤニヤするも良し、レクチャーの仕方に唸るも良しです。
 そして単に教える/教わる関係に留まらないのも面白い所です。教えていく中で、それぞれの理由を懸けてバトルに挑む姿に刺激を受けていく主人公の内面にもご注目を。

 そして本作のキモであろう、MCバトル。プロからド素人、女番長から文学少女まで、来歴も個性もそれぞれ違うMCから放たれるverseの多様さ、粋の競い合い方の広がりが非常に楽しいですし、僕もフリースタイルへの興味を一層掻き立てられました。勝負を分ける要素としても、韻やビートといった一般的なスキルのみならず、その場のオーディエンスの客層や感情まで考えられているのも面白いです。

 中でも、怒涛のクライマックス、最終決戦の熱量は格別です。
 一歩一歩、時には後退もしながら自分のラップを模索してきた彼女たち。そして本番では、自分の宝物、仲間、劣等感、確執、それら全てを練り上げマイクから放ち、オーディエンスを、読者を震わせます。バトル単体でも十分に聴き応えがありますし、そこに彼女たちが歩んできた物語、さらには描かれるより遥か前から続いてきた人生の重みが加算されることで、唯一無二のカタルシスが脳髄を駆け抜けます。
 でかい悶着に決着のつくラストヴァース、拒絶できない強烈な快感。上がる心臓のBPM、掻き消える周囲のBGM。

 後はカクヨムという場だからこそ声を大にして言いたい、「活字中毒経験者は日本語ラップにハマる」という感覚が見事に描かれていたのが非常に嬉しかったです。言葉の響きを模索し続けるパレス、あなたも踏み込んでみては如何です?

そんなバイブス急上昇な本作を送り出したMC三郎さんに、まずはこのレビューを読んでくださった僕とあなたから、盛大に拍手をお送りしたいです。では、お手を拝借!

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