泡雪に眠る

　数十年前からこの国を蝕む感染症。
髪が白く生え変わり、治療法のないこの病気を、人々は『泡雪病』と呼んで恐れた。
　泡雪病に感染した患者は、死ぬ間際に暴れ近くの生き物を感染させようと襲う。『眠り屋』は、そんな淡雪病の患者が穏やかな最期を迎えるための仕事だった。
　合法的な人殺しとも言えるこの仕事に、人々は嫌悪の目を向けると同時に、すがってもいた。

　東都一の眠り屋と呼ばれる凜太郎は、ある日政府から仕事の依頼を受ける。
　ある泡雪病患者の少女を眠らせてほしい、と。


　心を救うために命を奪う青年と、存在してはいけないのに存在を求められる少女。
矛盾だらけの二人は、矛盾だらけのこの世界で必死に足掻く。