主人公と二人の男との恋の落ち方がどちらも丁寧に、ロマンチックに書かれています。この後一体どうなったのか。どうなるにしても最後に来た人は彼女の待ち人であればいいと思いました。転がるのはどっちでもいいかな。良い意味で。
コーヒーの一滴一滴が落ちてゆく、その短時間で巡らされた想いのベクトル。交錯していく片想いが絡むことは縺れることであり、答えを出させてくれないことが恋の揺るがぬ強かさ。それが描かれた作品だと思います。苦味と苦しさが襲いつつも、ハッとする読後感を得られました。
ほんのわずかな字数の短編でここまでの濃厚な心理描写ができるとは素晴らしいの一言です。恋人との距離感、友達との距離感、いずれも絶妙に描かれていて、そしてラストは余韻だけを残して。ラストがぜんぶ見えればいいわけじゃない。人の心のひだをめくることがすべてじゃない。ただただこの余韻に身をまかせたい。コーヒー、ごちそうさまでした。