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「いやはや、青春でしたね!」

「青春だったわね!」

「何で俺の中学の頃の思い出をテレビに映せるんだ!?ふざけんなよ!消せ!今すぐ消せ!その続きを見るな!!」

「分かってますって、こちとら訴訟大国生まれですよ?今だって、訴えられたらどうしようと肝を冷やしてますから」

「ならやるな、つか、前から思ってたが、なんでまだいるんだジャック?」

「え?自分、別にハロウィン限定じゃないですよ。まあ、ハロウィンがメインですが基本的に永年に渡って現世を彷徨ってますんで、あと10月からずっといたのに今さらですね」


「そうか、まあ何かと助けてもらってるから良いんだが、特にこの時期はあいつがポンコツになるからな……」

「ああ……」


「ジングルヘル!ジングルヘル!反吐が出るぅうううううう!!」

「あれが…恋人がいないクリスマスですか」

「違うな、正確に言うならクリスマスが近づくと増えるカップルクレーマー、膨大な仕事量と安月給の現実、世間様はクリスマスでお祝いムードの中での残業、そして同時並行の年末商戦と言う地獄、複合的な事が理由でのあれだ」


「今日は反吐の出るクリスマス、ひゃはりゃああああ!!ジングルヘル!ジングルヘル!」


「ジングルベルってあんなに狂気が篭っていましたっけ?篭ってませんよね?」

「まあ、うん、あれだ。クリスマスと言う行事の裏には、常に犠牲になっている人がいるという現実だ」

「イエス・キリスト激怒案件ですね」

「まあ…ハロウィンもそうだが何時かは国際問題だな、俺はハロウィンの惨状を見たアイルランド人が反英歌よろしく反日歌を作るんじゃないかって心配だ」

「今の所は無いですよ。まあ、アイルランドには行った事ないですが」

「ジャック・オー・ランタンなのに?」

「アメリカ生まれですから、ちなみに今は前回の本場仕様から、可愛いポップでキュートな日本仕様です」

「ああ、今更だけど確かにそうだな。とりあえずサンタ帽を被っとけ、百均のだけど」

「スーパーと百均がここまで縁が深いとは、働いてみないと分かりませんね、あとお客さんが買った後に帰っている途中、卵を割っても店責任で担当者が謝罪しないといけない現実にも驚かされました」

「そうだな、てめぇが割ったならてめぇで始末を付けろって話だ」


「クリスマス、何の日だ?キリストの誕生日。なら祝え、いちゃつくな、カップル共よ、×××じゃねえぞ××××××!!」


「いい加減にその不吉なジングルベルを歌うの止めろ!」

「そうですよ。あの人達、基本的に執念深いので必ず報復されますよ」

「そうなの?」

「自分、本家の巻き添えっすからね、ただ洗礼を受ける前に死んだ所為でウィル・オー・ウィスプになり、そこにジャックが追加されて今っすからね」

「ん?つーことはインディオ?」

「いえ、開拓民です。まあ風土病での病死ですわ」

「なら問題無く天国行きだろ、悪いことしてねーんだから」

「いえいえ、あそこは洗礼を受けた善良な魂限定なんですよ。自分、洗礼受けてないんで即地獄行きかジャックの二択なんすよ」


「ジングルヘル!ジングルヘル!」


「「……」」

「放置だ、面倒臭い」

「来年は、幸せなクリスマスを送って欲しいですね」

「じゃあ帰るか」


「あれ、そう言えば先輩はジャックと同居中ですか?」

「お帰り、現実を直視する気になったか?」

「え?現実?日本国は仏教国で神道国家ですよ?つまり12月のイベントは天皇誕生日と大晦日だけですよ?」

「ああ、うん……」

「涙が、出て来ました……」


「それじゃあ帰るか、店長と副店は黙らして来たから、定時帰りするぞ」

「コンビニおでん!コンビニおでん!」

「ジャック、五つまでな」

「はい、いや~コンビニのおでんは最高ですよね」

「ジャックは何が好きなの?」

「自分はだし巻き卵です、最初は驚きましたが今では好物です!」


「あれ?お前、確か大根が好きじゃなかったか?」

「そうなの?」

「ええ、でもコンビニのより先輩さんがこだわって作るおでんの、出汁が染みて濃い色に染まった大根が好きというのが正しいですね」


「………」


「あれ?香里さん?」

「おーいどうした?お前もおでん食うか?」

「ユダめ……」


「「はい?」」


「ジャックはユダだったのか!!」


「おいおいおい、何言ってんだ?」

「そうですよ、ユダだなんて。あんな地獄の底の裏切者トリオのセンターと一緒にしないでくださいよ!」


「うるせええええ!!ふっざっけんなよ!こんな、今にも星が降って来そうな夜にいぃいい!」


「おい、しっかりしろ。何だ?おでん以外にも食いたいのか?ケ〇タッキーか?マク〇ナルドか?」

「それともファ〇チキですか?もしくはナ〇チキですか?」

「L〇キじゃボケェエ!レッドじゃあ!好みの大きさに切ってから!ご飯の上にレタス引いて!その上に載せてさらにマヨネーズを掛けて食べたるわあああ!!」


「大丈夫でしょうか?」

「まあ…二分くらいしたら戻って来る。去年もこうだった、同期の女性社員に同じ様に吠えてた」

「その人は今?」

「ん?確かバイヤーと結婚した、去年のクリスマスに」

「……悲しい出来事ですね」

「まあ、気にしなけれりゃあ良いじゃねえか?」

「あ、先輩さん!見てください!今!今、流れ星が!」

「ああ、確かに星が流れて来そうな夜だからな、もしかしたらまだまだ流れ星が降って来るかもしれんな」

「思いがけないクリスマスプレゼントです」


「ジングルヘルウゥウウウウウウッ!!サンタァアア!良い子にしてんだから私には昇給か大富豪の男寄こせ!!」


「おーいフィンランドが切れる前に止めとけ」

「もしくは聖ニコラウスさんが優しい内に止めましょう」

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星流夜 以星 大悟(旧・咖喱家) @karixiotoko

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