島の闘牛と高校生が織り成す、青春物語。

 何の娯楽もない島には、この島ならではの闘牛があった。その闘牛を巡って、奮闘する高校生たちとその周りの大人たちの、青春を描いた大衆小説である。
 始まりは迫力ある闘牛シーンだ。欧米の闘牛とは違い、巨体の牛同士が本当に角を突き合わせて、相手の牛を戦意喪失させた方が勝ちだ。その闘牛の世界で、悪魔的な強さで連勝を続ける、一頭の牛がいた。この牛は、何体もの牛を廃牛に追い込んでいた。相手の牛が戦意喪失した後も追いこみ、闘牛として二度と戦えなくするのだ。しかも、その追い込み方も悪意を感じるほどだ。
 そんな中、高校生の主人公は、仲間たちと、高校で密かに闘牛を飼い、育てていた。主人公を含む四人の立場は、それぞれ違う。島の外から来たやつもいれば、闘牛にそれほど興味のないようなやつもいる。それでも主人公の闘牛熱に引っ張られるように、四人は行動を開始する。署名を集め、今までとは違った闘牛の在り方を提案し、学校に闘牛の飼育と闘牛出場を認めさせる。島の大人たちも巻き込んで、島版コロセウムの幕が上がる――。
 
 果たして主人公たちの牛は、悪魔的な戦い方をする牛に勝てるのか?
 そして、新しい島の闘牛の姿とは?

 作者様の島への愛情と、闘牛への熱が伝わってくる一作。

 是非、ご一読ください。