乙女ゲーの世界に転生！？ でもそれはヒロインの思い込みだったのかも。

乙女ゲームの世界への転生ものは最近の人気ジャンルかと思うのですが、本作はおそらくその中でもハイテンションさとヒロインの破天荒さで群を抜いた楽しい作品だと思います。

前世でやり込んでいた乙女ゲームの世界に転生した少女。しかし、彼女に与えられたポジションは乙女ゲーム「あな恋」の中で崇拝していた攻略対象の旭様でした。
しかも、性別は女のまま、容姿もぱっとしないままでの転生。
転生した旭は、崇拝する旭様のポジションを自分が奪ってしまったことにとてつもない罪悪感を抱き、それならばせめて旭様の親友だった幼なじみの壮一と、あな恋ヒロインの琴音ちゃんのカップリングを成立させようと目論見ます。
その計画の相談相手が、従弟の空太。彼は半信半疑ながらも旭の熱弁する「あな恋」のストーリー展開に即して壮一の恋を実らせるという旭の計画に半ば仕方なく協力するのですが……。

旭の超勘違い＆超鈍感が炸裂し、物凄いインパクトの悪役令嬢も登場し、物語は楽しいドタバタが続きますが、根元にはしっかりしたテーマがあります。
「ゲームの世界にいくら似ていても、そこで生きている自分も、周りの人間も、ゲームの中でプログラミングされた存在じゃない。人間としてちゃんと感情を持っていて、自分の足で人生を歩んでいるんだ」ということ。

ゲームの設定や展開にこだわりすぎて周囲が見えなくなっていた旭のハチャメチャぶりはおかしくもありますが、空太の言動で少しずつそのことに気づいていく旭の成長はとても印象的で好感がもてました。

テンポよく進む物語なので、サクサク読めます。
楽しい読書時間を、あなたもぜひ。