それは人類にとっての福音か、それとも災いか

考古学者の田辺は防衛省に勤める旧友からある遺跡の調査を依頼される。
その遺跡で彼女が遭遇したものは、宇宙人が作りだしたと思しき未知の生命体――パリキィだった。350万年前から地球に居たパリキィは調査班の面々に己を木星に飛ばすよう要求する。

一度はパリキィへの協力を約束した一同だが、時が経つにつれてある疑惑が持ち上がってくる……果たしてパリキィは本当の目的を語っていたのだろうか?
ロケットの打ち上げまで残り一週間、それぞれの手法で調査を開始した科学者たちは、やがて思わぬ真実に行き当たる。

SF的な設定を軸にして、謎多き生命体――パリキィの正体を探る変則的なミステリー。
作中に登場する七人の科学者たちはそれぞれ独自の価値観を持っており、どの人物もキャラが立っている。
彼らのやりとりは専門的な知見を交えつつも、ユーモラスかつ軽妙で読みづらさを感じさせない。

終盤で明かされるパリキィの狙いも意外性たっぷりで、SFとミステリーの融合に見事成功している。

(SF×ミステリー 4選/文=柿崎 憲)

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