177:私の変化、ちょっと、個人的なこと。(個人的関係者のかたはすこし閲覧注意かもです)

 通信大学へ移ったこと、拾い上げをしていただいたこと。

 この年の公の変化は、このふたつに尽きます。

 ですがもうひとつ、個人的には大きな変化がありました――デリケートというか微妙な話なので、かなりぼかして書きますけれど、その、人間関係が大きく変わったんですね。このときの私にとっての。



 二十歳前後の私がそうとう放蕩的な生活を送っていたことはここまでにも書いた通りですが、二十一歳になるこの年、それらは極まっていました。爛熟していたといってもいいほどでしょう、もう腐りかけなほどに。

 見境なくあちこちでつくった人間関係。朝も昼も夜も関係ないどんちゃん騒ぎ。

 自宅ではないところに帰っていました、いつも、いつも。しかもつまるところ一ヶ所ではなく。


 どうして当時の私がそんなことを繰り返していたかというと、つまりは満たされないからで、あとはやっぱり自分の家にいても落ち着かなかったんだと思います。

 当時の私はほんとうに頭がおかしくて(いまもおかしいということではなく、と前も書きましたねこれたしか!)、実家でおとなしくしていられるような状況ではありませんでした。

 親とは、いまでこそ仲よく、しみじみとよい時を過ごせますが、当時は無理だったのですね。だから、いろんなものを過剰に外に求めていた。



 けれどもやっぱりそういうのはよくないと、遅い、遅すぎるほどですが――思いはじめたのが、このころでもありました。

 いえ、それはめちゃくちゃきれいに言った場合、です。もっとぶっちゃけて言えば、要は私はあのときいろんなことが気に入らなくて、周囲のひとたちのことも気に入らなかったのです。

 いまでこそだいぶよくなったと信じたいですが、若いころの私にはいわゆる「人間関係リセット癖」がありました。だれかと長く人間関係をもつことが困難だったのです、そういうのは無駄だとばかり思っていましたから。そして二十一歳のその時点ではもうつきあいはあまりに長くなってしまっていたと私は感じていた。けれどもそれまで踏ん切りがつかず、ずるずるときてしまっていたのです。



 踏ん切りがついたのは、どうしてでしょうか、単に時がきたのか、それともやはり通信大学生としての再スタートや、作家としてのいちおうのスタートが、ある種の自信を私にもたせたのか――わかりません、いまだに。けれどもとにかく私はあのときには「いけない」と思った。だから、行動を起こした。具体的には、とりあえず「毎日実家に帰る暮らしに戻そう」ということで、じっさいにそうしました。




 このときの私には、いろんな至らない点があって、いろんなひとをいろんなかたちで傷つけたと思います。ごめんなさい。このように謝ってももう栓なきことですし、当時私とかかわっていたかたがたにはもう私の存在なんて忘れ去って興味もなくして暮らしていてほしいというのが本音ですが、まあ、このエッセイはオープンですので、いちおうそれを書いておきます。

 そのうえで、その。これは、やっぱりエッセイなので。ぼかしてとはいえ、書かねばいけないことも、またあって――万一当時の関係者のかたがいらしたら、ここから書くことは、もしかしたら、あまり見ないほうがいいのかもしれませんけれど。もうすっかり過去だというのなら、ご自身の責任で、どうぞ……という感じです。






 当時の私は、要は周囲のひとたちが好きではなかった。

 情はあった。思い入れもあった。でもそれは、積み上げた時間があっただけというだけのこと。崩れるのはもったいないと思っていただけのこと。

 いや、当時は好きだと思っていました。その情が、思い入れが、つまりは好きということなのだろうと。誤解していました。私は完全に誤解していました。




 いま、私は彼のことがこんなにも好きです。

 強烈に、決定的に、迷いなく、好きです。

 彼へのこの気持ちを、一般的に「好き」というのならば――当時の感情のそれらはすべて、まがいものでした。




 いまの私には、それしか言うことができません。

 ともかく、そうやって、私は二十一歳にして高校卒業直後あたりからはじまった放蕩生活にいったんのピリオドを打ち、ふたたび実家の自室で生活を送るようになるのでした――。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

うちの彼氏がおもしろいので聴いてください。 柳なつき @natsuki0710

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ