176:私の変化、小説の、拾い上げ。
次にというかなんというか、いえ、のちにして思えば最大級に決定的に、大きかったこともこの時期にはありました。
大学を中退して、通信大学に移って、それらの教材が段ボールでどすんと住んでいたところに届くころ――唐突に、その電話はかかってきました。
覚えのない番号。最初はレンタルビデオショップの延滞料金かなにかかと思いました(当時の私は期限内に返却するとかがほんとに下手だった)。怖い。でもおそるおそる、電話に出てみました。
その電話こそが――出版社の、編集さんからの電話。いわゆる「拾い上げ」の電話でした。
このエッセイでは彼とのかかわりがメインなので、小説関係とか執筆のことはわりとさらりと流してきましたが、じっさいには大学に入ってから中退するまで、そしてそのあとも、私は執筆はかなりの度合いで集中して続けてきました。そもそも大学に入りたかったおもな動機が「四年間、執筆時間がほしい」だったりしたのです。第一志望に受からなかったにもかかわらず浪人を選ばなかったのも、これがいちばん大きかったりしました。
書いて、書いて、書き続けて。ひきこもりになってからも、書くことだけは続けていました。時間だけはありあまっているぶん、執筆だけにかんして言えばもっと集中したと言ってもいいくらいです。
いろんなところに投稿したりもしました。だからもちろん、出版を目指して動いていた。そういう意味ではなにかがかなった瞬間だったわけです。でもいろんなかたがおっしゃるように、私も最初は喜びより先に驚きがきました。
その賞に応募したのは、けっきょく辞めることになる大学に復学するのとほぼ同時、つまり四月ごろのこと。夏に、短編が三次選考に残っていることは確認しておりました。けれどもそのあとはだめだった。だめだったのだから、次、ということで、新作を思案している時期だったのですね。
拾い上げ、たしかにそれに積極的な賞だとは思っていたけれど、まさか――けれどもそれは現実でした。私はここから、ほかに職業もない学業もたいしてやっていない実質ニートの心と身体を病んだひきこもりのくせに、いや、くせにというのもなんですけど、ともかくそんなかなりボロボロの個人的状況で、それでもどうにか、出版社での顔合わせやら、提出企画書やら、編集さんとの打ち合わせやら、書籍作業やら、そういうのを経験していくことになります。
まあ、それにつきましても、書いているとまた別の作品になってしまいますので……とにかく生活が、といいますか生活の意義が、がらっと変わったということを、ここでは述べておきます。このことも、このときにすぐというよりは、のちに彼とのおつきあいが深まったときに深くかかわってきますね、ほんと……。
(このとき拾い上げていただいた編集さん、そして出版社には、いまだにめちゃくちゃお世話になっており、感謝が尽きません。ありがとうございます。
このエッセイまでは見ていらっしゃらないような気はいたしますが、いちおう書いておきますと……原稿作業はしっかりやったうえで、息抜きも兼ねて、こういうエッセイも書かせていただいておりますので……!!
ほんとうに感謝が尽きません、がんばります。これからもがんばります)
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