日々無さんと入学式ーその1ー
暖かい陽の光が降り注ぐ。
風はまだ若干の冷たさを孕んでいるが、陽光と混ざり合い、なんとなく過ごしやすい感じだ。
「...んっ?」
髪にピンク色の花弁が触れた。桜だ。目の前に咲く桜は満開…とまでは行かないがとても綺麗に色付いている。
間違いなく春だ。とても心地がいい。こんな日には家で寝ていたいなぁと思うが、今日からはそうはいかなくなるのだ。
理由は簡単、入学式。高校の入学式なのである。幸せで平和でただひたすらのんびりできた春休みはもう終わった。課題は終わらせていたからいいものの、また普通に学校生活が始まる。
「志望理由=家から近い」という安直な考えで特に苦労せず入学を決めたため、別に達成感もなければ満足感もない。レベルも自分に見合っているからまずまずと言ったところだ。制服も、まぁそこそこ可愛い。黒が映えるシックなブレザー。タイツとローファー。赤のチェック柄が可愛いリボンとスカート。なお、チェックの色は学年で異なるようだ。
少しだけ気分は上がるが、それでも、式典という退屈な響きには勝てない。上がった気分が下がり渋々通学路を歩いていると、後ろから何かがむにゅっと飛びついてきた。
「あ〜かりっ!!」
背中に2つのむんにゅりとした感触が伝わる。相変わらずおっぱいでけぇな。
私の名前を呼びながら、ギューッと抱きついてきたそいつは、私の友達の「
(あ、めんどくさくて自分の名前名乗るの忘れていたけど、私は「
「千里…ちょっと苦しい。」
「あ、ごめんごめん。」
千里が離れた。割と力の入った抱擁だった。
「えへへ、だって久しぶりだったんだもん」
「まぁ私ずっと春休み寝てたからなぁ。ところで、入学式だけどその髪色どうなの。」
歩きながら話を続ける。
千里の髪色は私の黒髪とは対照的な綺麗な茶色だった。まぁ体型も対照的なのだけれど。
「別に大丈夫じゃないかな〜地毛だし。」
「先生が信じてくれるといいけどね。」
「多分大丈夫だよ!面接もこれで行って受かってるし!」
「お前よくそれで受かったな…単純に頭いいってのもあるけど…」
「黒染めするのも考えたけど逆に違和感ありそうだしね〜」
などとたわいもない話をしながら通学路を歩き続けていると、学校が見えてきた。
「着いたね〜」
「時間も割といい感じだね。」
集合完了時刻の15分前。周囲には、同じ制服を身にまとった人達が同じように昇降口へと向かっていた。騒がしく、とても明るい雰囲気だ。
「じゃあ、私たちも行こうか。」
「うん!行こ行こ!」
私と千里は昇降口へと歩き始めた。これから、また学校生活が始まる。
舞い散る桜の花びらは、私たちの背中を押しているようだ。
日々無さんのエトセトラ つるぺた:ぺたりこ @P3T4RiC0
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