自分の発明した薬を奪われ、失意のままに死んだように生活をしているシュー教授。
そこに丸本というセールスマンが不可思議な男を連れてくる。名はソレイユ。
課せられた命令は絶対に守る、お世話用のロボット。
シュー教授とソレイユの交流と、その未来が描かれるSFチックな世界観のドラマである。
ソレイユは守り続ける。ロボットであるからこそ、人間よりも長く存在することができる。それでも、ソレイユは守り続ける。シュー教授との約束を。
もう一つ重要なアイテムとして、不老抗寿の薬がでてくる。年も取らずに命に限りをなくさせる。永遠を夢見た人間たちの泡沫の結果。
それが現実となった。
永遠が現実となったり、ロボットの進歩が進めば、おそらくこうなるだろうといった未来を想像させるお話。
命令を守るだけのソレイユの住む森は、まるで世界の終着点の様である。経済体系も、面倒くさい関係も存在しない。ただ約束のみに縛られた世界。これが終わりでなくてなんなのだろうか。
それを絆と呼ぶか、プログラムと呼ぶかは、解釈次第。
そういった一つの約束事を守り続ける。
ただそれだけのことに、心を感じるのだとしたら、きっとそれは美しいものなのだろう。
ディストピア系のヒューマンドラマもの。
SF的な世界観で語られるこの物語は、心に響いてくる確かなドラマが描かれていてとてもよかったです。古典SFのような古き良きサイエンス・フィクションの雰囲気、というのが最初に抱いた印象でしたが、作品全体として童話らしい優しさも感じることもあれば、文体などから文学的な美しさも感じることもあり、文芸作品としてとてもいい物語だったように思えます。
ただサイエンス・フィクションとして細かい部分が多々気になりましたが、しかしながらそういったものをカバーしきれるくらいの「読ませる」力強いドラマがあります。短い作品でもありますので、隙間時間に読める「いいお話」として楽しまれてはいかがでしょうか。