行ったこともない茨城の山野に迷う

泣いてしまいました。
お話の流れとしては、「そうだろうなぁ」と、どこかで行き着くであろう悲しい結末の予感を覚えるものかもしれませんが、月浦さんの表現が逐一五感に触れてくるというか、丁寧で、修一が悲しいと思えば悲しく、ひもじいと思えばひもじく、恐ろしいと思えば恐ろしくなるような。どんどん感覚が主人公の中に取り込まれていく妙に唸らされました。
夕暮れ。暗がり。黄昏時にどこかから聞こえる牛の声。漂ってくる夕餉の香り。繋いだ手の薄ら寒い感触。
そんな風に一緒に歩いて慄きながら逃げて、どこかで分かってたつもりだったのにシロとの別れにホロリと来てしまいました。
どうか、修一君には幸せになってて欲しい。物語の登場人物にそう願いたくなるような。
素敵なお話をありがとうございました。

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逢魔ヶ刻