不思議な絵

リエミ

不思議な絵


 美術部のあいちゃんは、ある日先生から、有名な画家の絵を見せられた。


「この人はきみたちと同い年の青年だ。なのに、こんなにリアルな絵を描いている。参考にしなさい」


 その画家の名前は、こうくんといった。


 特に、人物画がうまかった。


 今、個展を開いていて、世界中を回っているらしい。


 もうすぐ日本にも来日する予定だった。


 あいちゃんも会いに行こうと決めた。




 ある日、TVの取材で、こうくんの新作が発表されていた。


 それを見たあいちゃんは、心臓が飛び上がるほど驚いた。


 なんと、絵に描かれているのは自分ではないか!


 あいちゃんは絵のモデルになったことなど、一度もない。


 それが、まったく会ったことのない、有名画家の作品になるなんて!



 よく日、学校でもあいちゃんは話題となった。


 これは是非とも本人に会って、真相を確かめなければ。




 こうくん来日が迫り、TVのCMや個展のお知らせなどで、こうくんをよく目にするようになった。


 こうくんは密着ドキュメントにも出ていて、その番組中でも、得意な人物画を描いてみせた。


 あいちゃんはますます驚いた。


 こうくんの描く、リアルな人物像は、どれもがあいちゃんそっくりなのだ。



 インタビューの人が、こうくんに聞いていた。


「これは、どなた?」


 こうくんは言った。


「僕にもよく分かりません。イメージで描いているだけです。描かなければいけないという、強い思いで描いています」




 そしてついに、個展のサイン会で二人は出会った。


 目と目が合った瞬間、こうくんは言った。


「きみじゃないか! 僕が何度も夢に見た子は、実在したのか!」


「絵を見て、会いに来たんです。どうして私なんですか?」


 あいちゃんの問いに、こうくんははっきりと言った。


「やはり、描いてよかった。僕は、こんな子に会いたいという思いで、描いたんだよ。そしてこの絵は、僕の理想のタイプだ。夢が、引き合わせてくれたんだよ」




 それからというもの、こうくんとあいちゃんは、夫婦で、今も絵描きを続けている。


 今こうくんは、夢で見た子供の絵を、たくさん描いている。


 きっと、実物に出会えるに違いない。




◆ E N D

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