輪廻転生
リエミ
輪廻転生
いつも同じ夢を見る。
女の子が話しかける。
「あなたの寿命の一年を、私にくれると約束したら、好きなものをあなたにあげるわ」
「あげるさ」
と、その男は言う。
どうせ夢の中の話だ。
現実には関係のないこと……。
翌日、男は好きなものを手に入れる。
そしてまた夢を見る。
「今度は何くれる?」
男は女の子に、寿命を一年分ずつ渡しながら、欲しいものを手にする。
そのうち、夢の中の女の子が成長し、大きくなる。
「あなたが命をくれたので、助かったわ」
女の子は言った。
「私は輪廻転生として、あなたの生まれ変わりになる女なの。まだこの世に生まれてはいないけど、ずっと待ってるなんてつまらないわ。だから早く、あなたには死んで欲しかったのよ」
「どうして好きなものをくれるんだい?」
男が聞くと、「見返りよ」と言う女の子。
「あなたの命は私。だからちょっと意思や思考を左右して、好きなものを手にさせたの」
「だけど俺の金は減ってないよ?」
「奪ったのよ」
男は近頃、店のあちこちで自分の欲しかったものが盗まれているという、強盗事件を思い出す。
男は無意識的に女の子に左右されて、自分が奪った犯人だと知った。
「どうしてそんなことが? 俺の命は俺だけのものだ! きみには渡さない!」
「命は使いまわしされるものよ。初めからそう決まってるの。皆は、誰かの生まれ変わりなの。まだ生まれてない人のために、本当は早く死んで欲しいと願われているのよ」
女の子は言った。
「あなたはもう、終わりだわ」
男は急死し、女の子が生を受けた。
そして、夢の中に出た時のように、大きく成長した時、それは起こった。
「やあ、きみ……」
あの男が、女の子の夢に出てきて、言った。
「あなただれ?」
女の子は聞く。
「そうか、生まれ変わると以前の、生まれる前の記憶はなくなっているんだね……」
「そりゃそうでしょうよ。生まれる前なんて、覚えてるわけないわ」
そこで、男は言った。
「何か、欲しいものはあるかい?」
◆ E N D
輪廻転生 リエミ @riemi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
参加中のコンテスト・自主企画
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます