わからない……わからないのよ。でも、懐かしさで涙が止まらないの……。

ある日、辺境の村の上空に浮遊する要塞が現れて、放たれた光が周囲を焼き尽くす。
そして、その要塞から落ちてきた少女フラウロウを助けたことがきっかけで、少年カイトの冒険が始まっていく……。

もうね、清々しいほどに正統派ボーイミーツガールのハイファンタジーです。
時速160kmの渾身のストレートをミットに思いきりぶち込まれた気分です。

おまけにこのストレート、打者の目前で浮き上がってきやがる! なんて威力だ!
ついでに、主人公の身体も、敵の要塞までも(魔法で)浮いていやがる!

……まさか、ここまで狙っていて、この火の玉ストレートのファンタジー物語を投げ込んできやがったのか!? だとすると、恐ろしい策士ですぜ、作者さま……。
(脚本の人、別にそこまで考えてないと思うよ。という声がどこからか聞こえてくる気もしますが、きっと気のせいでしょう)

圧倒的密度と世界観で構成された、往年の王道RPGを彷彿とさせるストーリー展開。読んでいる間、某DEENの夢であるように~的BGMがずっと鳴り響いておりました。
ってあとがきを見たら、なんと作者さまのBGMにも含まれていたようで……。
喜びのあまり、「やだぁ、作者さまとシンクロしちゃった♡」と、一人で乙女モードになっておりました。

いやぁ。浮遊要塞とか、ロマンですわぁ……。
ダイクロフトですよ。エストポリスですよ。最高ですわぁ……。
そして、ボーイミーツガールですよ。ラピュタですよ。思わず読み終わってから、四十秒でレビュー書く支度しちゃいました。

どことなく懐かしい気持ち……失われた子供の頃のワクワク感やドキドキ感を蘇らせてくれる、NHKで夕方アニメ放送しても全く違和感の無いストーリー。

……とか思ってたら、ちゃっかり昼ドラ的な展開とかも用意されていて、子供から大人へのほろ苦いステップアップまでしっかり体験させてくれやがりました。おいいい!!(無垢な少年、激怒)

ぶっちゃけ最後のほうね、英雄王ディリータENDになるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしてました。びっくりしたンだよ!

でも個人的には、主人公カイトと少女フラウロウやミューリィ、森のくまさんと戯れるリディア嬢とのやり取りなんかに和んだりしておりました。ふぉふぉふぉ。


さてさて、幼き日のファンタジー物語への憧れを心の中でくすぶらせ続けて、死んだ魚のような目をしている、そこの寂しいオトナたちよ!

ぜひ、この素敵な火の玉ストレートファンタジーを熟読して、失われた少年少女の頃の輝きを取り戻そうじゃありませんか! 
きっと淀んだあなたの心を絶対切断(アブソリュートディバイド)してくれますよ!

冒険の準備は万端かい!? 四十秒で支度を終えたら、早速物語の扉を開いて、ぼうけんのしょへダイブイン! 
きっと、あなたにとって忘れられない冒険になる……。

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