ファンタジーには、ハイとかローとかあるんですねえ。よく知らんけど。
本作は昨今流行りの異世界転生ものではなく、きちんとしたファンタジー作品であります。空に浮く要塞。落ちてくる少女。波動砲。そんなキーワードが『天空の城ラピュタ』を連想させますが、内容はジブリ的ではなく、どちらかというと、ラピュタ的。
ファンタジー世界にありがちなエルフとかゴブリンとかは登場せず、この世界に生きているのは人間のみ。ただし、そこに、魔法はある。
この世界の魔法は、ひとり一種のみ。それぞれに発現する魔法には当たり外れがあり、その魔法能力により、人のランクがある程度決まってしまう設定は、『魔法の国ザンス』を想起させる。
また、ちょっと気の弱い普通の主人公が大事件に巻き込まれていく展開は『ベルガリアード物語』っぽい。
作中で登場する「城塞都市」とか「迷いの森」とか、どきどきわくわくするキーワードも多く、本格的なファンタジーであることは間違いない。
が、魔法発動時に一文程度の詠唱呪文が入るところはゲーム『タクティクス・オウガ』みたいだし、SF要素は皆無であるにもかかわらずSFを想起させる設定が多いのは『ファイナル・ファンタジー』の初期の作品の雰囲気がある。
全体として、本格フアンタジーというより、ゲーム・ファンタジーといったほうが近いのかもしれない。
となると、当然物語は、最初は弱い主人公がだんだん強くなっていって、最後には世界を救う英雄になる……という展開を見せるかと思いきや、それがまったくそういうお約束展開にならないこところが、本作の最大の魅力だろう。
主人公カイトが使えるのは、モノを浮かせるだけの『浮遊《レヴィテート》』だけ。剣は弱いし、性格もあまり積極的ではない。たくさんのヒロインに囲まれているにもかかわらず、モテている感じでもない。
もちろんクライマックスでは世界を救う戦いに参加するのだが、それとて彼がメインといってしまうと、語弊がある。
言うなれば、そんな欲のない主人公が、周囲に気を使ったり、状況に流されたり、偶然の出会いによって助られたりして、それでも世界は救う、そんな物語である。
ストーリーは直線的で入りやすく、また世界設定もゲーム的で、これまた入りやすい。主人公の柔らかさも、嫌悪感を感じる人は少ないはず。
作中で展開する血の繋がらない姉への想いとか、『勇者』の途を歩む親友への劣等感とか、読者の心理をゆさぶるドラマも多い。
だからといって、物語は勧善懲悪的な、正義と悪との戦にはなっていない。攻めてくる帝国軍と守る王国軍。帝国軍は侵略者であるが、王国は王国で帝国に対して不利益を与えている。誰かが絶対に正しく、極めつけの悪人がいて、世界を滅ぼそうとしているのではない。人と人との価値観のすれ違い、固定観念などが誤解を生み、衝突が起きているだけ。
なんと! 読了してから気づいたが、二十五万文字もあった。十万文字くらいの体感で読み切ってしまったが。
魔王や勇者にうんざりしている方に、お薦めのファンタジーである。
これは、主人公カイトくんが、けしからん美少女たちから無条件に好かれまくってあたふたする物語です。
本作には、たくさんの美少女が登場します。
その華奢な身にはあまるのではないかと思われる、壮大な使命を背負った正ヒロイン、フラウロウ。清楚系儚い美少女枠。
主人公カイト君の幼馴染の恋人にして義理の姉にして実は長年の想い人でもあるエリシア。色っぽいお姉さん枠。
見た目は美しい赤毛の女の子、でも、その心はというと実は――? 凛々しくて男前なミューリィ。可愛い女の子枠(あれ?)。
生き様も、心も、ちょっぴりお茶目なところまで含めて、美しく気高く格好良くて素敵ですリディア嬢! 格好良いお姉さん枠。
とある事情から帝国へとわたった妹、セーラ。
ね!? 魅力的な美少女が沢山登場するでしょう!? まぁ、主人公が無条件に好かれまくるってところは大嘘なんですけどね!!←
でもね、それが大嘘だからこそ、良いのです! それこそが、本作品の魅力で味わいなんです!
上述したとおり、この世界には、いわゆる記号で括れてしまうキャラクターは一人も出てきません。
それは、彼女たちが、ちゃんと心・信念・想い・意志を持っていて、生きている人間だからです。彼女たちは、物語に登場する美少女であるとともに、ちゃんと人間的な感情を持っていて、綺麗ごとだけではないことも沢山起こるリアルな世界で、それでも精一杯に生きているんです。
もちろん、美少女たちだけではなく、イケメンからイケ(てる)オジ(サマ)まで登場しますよ! もちろん彼らも、しっかり生きています。
だから、実はハーレム小説ではなくて、緻密に練られたファンタジー世界の中で織りなされる、圧倒的な人間ドラマ劇だったのです。そして、ファンタジー世界の情景がこんなにも色鮮やかに目の前に浮かんでくるようなのは、作者様の筆力のなせる業なのでしょう。
プロローグに至るまでの道のりを知った瞬間、鳥肌、間違いなし!ラストはうるうるものです!
だからね、みなさんもぜひ、このハーレム小説を読んでください(´∀`*)←
個人的にファンタジー作品と言えば、小学生のころ夢中で読んだル=グウィンの『ゲド戦記』そして、ミヒャエル・エンデの『果てしない物語』を思い出します。あるいは、ロール・プレイング・ゲームの『ファイナルファンタジー』でしょうか。
今でこそ、「ファンタジー」=「異世界転生/召喚モノ」という等式が成立しえますけれど、fantasyとは本来「空想」や「幻想」を意味する語で、ギリシア語で想像、幻想力を意味するfantasticに由来しています。そして、作品のタイトルにも用いられているファンタジア(fantasia)という言葉は、ファンタジーと同義で用いられることも多いですが、「幻想曲」を意味する名詞です。
作曲者の自由な想像力に基づいて創作される器楽作品、ファンタジア。本作品はまさに成井風ファンタジア文学とも呼べるものではないでしょうか。
読後に残るのは、良質なロールプレイングゲームのエンディングムービーを見終わったような充実した余韻。それを生み出しているのは、やはり緻密な世界設定と、作り込まれた登場人物のキャラクター設定なのでしょう。
また、物語の随所に隠し味のように盛り込まれた格差社会のあり様と差別に対する問題意識が、ストーリー展開を重厚なものにしています。にもかかわらず、難解で重たい内容はなく、誰でも気軽に親しめるエンターテインメント作品として完成されているのは、ひとえに作者の文章表現が秀でているおかげでしょう。
「ファンタジー」=「異世界転生/召喚モノ」、現代のそんな常識を覆す成井風ファンタジア文学の世界を是非、味わってみてはいかがでしょうか。
ある日、辺境の村の上空に浮遊する要塞が現れて、放たれた光が周囲を焼き尽くす。
そして、その要塞から落ちてきた少女フラウロウを助けたことがきっかけで、少年カイトの冒険が始まっていく……。
もうね、清々しいほどに正統派ボーイミーツガールのハイファンタジーです。
時速160kmの渾身のストレートをミットに思いきりぶち込まれた気分です。
おまけにこのストレート、打者の目前で浮き上がってきやがる! なんて威力だ!
ついでに、主人公の身体も、敵の要塞までも(魔法で)浮いていやがる!
……まさか、ここまで狙っていて、この火の玉ストレートのファンタジー物語を投げ込んできやがったのか!? だとすると、恐ろしい策士ですぜ、作者さま……。
(脚本の人、別にそこまで考えてないと思うよ。という声がどこからか聞こえてくる気もしますが、きっと気のせいでしょう)
圧倒的密度と世界観で構成された、往年の王道RPGを彷彿とさせるストーリー展開。読んでいる間、某DEENの夢であるように~的BGMがずっと鳴り響いておりました。
ってあとがきを見たら、なんと作者さまのBGMにも含まれていたようで……。
喜びのあまり、「やだぁ、作者さまとシンクロしちゃった♡」と、一人で乙女モードになっておりました。
いやぁ。浮遊要塞とか、ロマンですわぁ……。
ダイクロフトですよ。エストポリスですよ。最高ですわぁ……。
そして、ボーイミーツガールですよ。ラピュタですよ。思わず読み終わってから、四十秒でレビュー書く支度しちゃいました。
どことなく懐かしい気持ち……失われた子供の頃のワクワク感やドキドキ感を蘇らせてくれる、NHKで夕方アニメ放送しても全く違和感の無いストーリー。
……とか思ってたら、ちゃっかり昼ドラ的な展開とかも用意されていて、子供から大人へのほろ苦いステップアップまでしっかり体験させてくれやがりました。おいいい!!(無垢な少年、激怒)
ぶっちゃけ最後のほうね、英雄王ディリータENDになるんじゃないかと思ってヒヤヒヤしてました。びっくりしたンだよ!
でも個人的には、主人公カイトと少女フラウロウやミューリィ、森のくまさんと戯れるリディア嬢とのやり取りなんかに和んだりしておりました。ふぉふぉふぉ。
さてさて、幼き日のファンタジー物語への憧れを心の中でくすぶらせ続けて、死んだ魚のような目をしている、そこの寂しいオトナたちよ!
ぜひ、この素敵な火の玉ストレートファンタジーを熟読して、失われた少年少女の頃の輝きを取り戻そうじゃありませんか!
きっと淀んだあなたの心を絶対切断(アブソリュートディバイド)してくれますよ!
冒険の準備は万端かい!? 四十秒で支度を終えたら、早速物語の扉を開いて、ぼうけんのしょへダイブイン!
きっと、あなたにとって忘れられない冒険になる……。
王国、帝国、空中要塞に迷いの森…もちろん、剣と魔法も。
ワクワクする王道ファンタジーの世界がここにあります。
主人公カイトと、共に冒険する仲間たちは、皆、どこか浮いた心をもて余していた少年少女で、彼等は出逢って、互いに影響しあい、助け合い、多くの悲しみを乗り越えて成長していきます。
しかし、このアツイ物語を語る主人公カイトの一人称は、成井先生ならではの達観系の大人びた語り口調で、サラサラと読めます。
長編ですが、なんだかあっという間に読み終わってしまった感じ…もっともっと、主人公たちの冒険を見たい!そんな風に思える物語です!
王道ファンタジーと呼ぶには、この物語に登場する人々はあまりにも現実世界で生きている私たちに近すぎる。王道ファンタジーに必要な勇者などと呼ばれる特別な存在がいない。主人公の少年だけでなく、彼に関わる人もみんな特別とは言えないのではないと思います。
空から降ってきた少女は、何を考えているのかよくわからないところもあるけれど、実際に考えを口にしない人はよくいると思う。この物語で重要な役割を持つ少女なら、実際にいる人よりも魅力的に捉えられるのではないだろうか。
主人公の少年は、応援するだけではなく、いらだつことも少なくない。だからこそ、彼一人ではこの物語は成り立たない。
他にも、理解はできるけど、共感はできない登場人物も少なくない。それは、やはり「等身大の人々」だからではないだろうか。
王道ファンタジーと呼ぶには、あまりにも現実世界で生きている読者に近すぎるハイファンタジーを、ぜひご一読ください。
ファンタジー・異世界というジャンルの中で、自分が求めていたのはこういう世界なんだよと、読みながらとてもワクワクしました。
主人公は辺境の小さな村に住む少年。ちょっと特別ではあるけど、それは彼にとって決して喜ばしい特別ではありません。
友人や、姉との関係性の中で見えるそのコンプレックスのようなものがとてもリアル。
心情描写が巧みな小説が好きならここで釣られます。水城は釣られました。
そしてそんな彼らが暮らす村に訪れる異変のインパクト。読んでいてハラハラする小説っていいですよね。ただハラハラするだけじゃなくて、主人公が遭遇するのは「ここから先」が楽しみになるような出会いも含みます。
物語に臨場感を求めるならここで釣られます。水城はここでも釣られました。
そしてファンタジー世界には必須の、情景描写がまた見事。ちゃんと映像で見えるんです、彼らの世界が。特に異変が始まるシーン。まるで自分もその場に居るような緊迫感と、世界の終わりでも見てるかのような「ヤバさ」で呑まれます。
描写が大事って人はここで釣られます。水城は三度釣られました。爆釣ですよもう。
昨今多いタイプの世界観とは一線を画すこの小説。自分が求めていた異世界ファンタジーってこういうもの。
何年も前に王道として愛された本格異世界ファンタジーが好きな人は、ぜひ読んでみてください。
ファンタジーといえば異世界転移モノが群雄割拠する昨今のWeb小説界隈にあって、真正面からハイファンタジー世界と向き合った作品。
牧歌的な山間の片田舎を故郷とする主人公。特殊な才に恵まれながらも幼い頃より偏見や奇異の目を向けられて育った少年。そんな彼を支えたのは、兄、姉と慕うちょっと年上の友人たちだった。
彼らと共に成長した少年は、自らの宿命さえ希薄になるような安穏とした日々を家畜のロバたちと過ごす。いつまでもこの平穏が続けばいいと願っていた。
しかしある日、突如として世界に転機が訪れる。
見たこともない巨大な空中要塞が現れ、地上に延々と続く影を落とした。
それはまるでこれから起きる惨劇を予感させるように。
そして事件の発端はこれだけでは終わらない。
空からはなんとひとりの少女の姿が――。
とここまでがざっとしたあらすじです。
どうでしょう、もうワクワクしませんか?
まだまだ始まったばかりのお話。その目で彼らの運命を確かめましょう。