第3話 妖怪大戦争
「ざっけんなテメー! 俺達がいる限りそんな事はさせねーぞ!」
当然その答えにいい顔をする日本妖怪ではありません。自分達の国を守ろうと、百鬼夜行は一気に敵意を
「ふん、ちょうどいい。そっちも軍勢で来ているんだ。戦って決めようじゃないか」
こうして楽しい百鬼夜行は一転、西洋妖怪対日本妖怪の激しい妖怪大戦争へと発展しました。妖怪同士の戦いのため、人々には迷惑はかけられないと、お互いに妖怪にしか効かない攻撃で激しい戦いを繰り広げます。
流石に海を渡って来ただけあって西洋妖怪一体一体の攻撃は凄まじいものがありましたが、日本妖怪は日本妖怪で土地の力が味方をしてくれます。一進一退の攻防は続き、その一部始終を人々はその目で見る事が出来ました。
攻撃のとばっちりが来る事がなかったのもあって、ここでも観戦している人々はこの闘いを面白いイベントとして楽しみます。
「おっ、すげー! 何だあれ」
「やっべ! これムービーで中継っしょ!」
若者達はそれぞれに持っていたスマホを空中に掲げます。リアルタイムにネット中継される妖怪大戦争はその日、世界中で大きな話題となりました。
「ママ~!」
「すごいわねぇ~。映画か何かのプロモーションかしら~」
さっきの親子連れもまた空中で行われている激しい戦闘に釘付けになっています。戦いが大きく盛り上がる中、これがリアルに行われている妖怪同士の抗争であると言う事を誰一人として気付きません。どこかの企業のプロモーション映像だとみんなはそう思っていたのです。
やがて戦いは膠着状態となり、お互いに消耗し尽くして、決着のつかないまま痛み分けとなりました。
「や、やるじゃねーか」
「そっちこそな……」
死力を尽くした西洋妖怪と日本妖怪はお互いの力を認め、称え合います。奇妙な友情が生まれた瞬間でした。停戦協定を結んだところで、ボロボロになった赤鬼がつぶやきます。
「考えてみたら俺達は死なねーんだ。決着がつく訳もなかったな」
「それでも力の差があれば勝敗は着く。今回はお互いに強かった。それでいい」
ドラキュラは少しだけ強がりをいいました。どちらも持ち上げるこの発言に赤鬼も気を良くします。
「ああ、こっちもそれでいいぜ」
こうして戦いも終わったと言う事で、西洋妖怪集団は次々に旅立ち始めました。その様子を見た赤鬼は踵を返したドラキュラの背中越しに声をかけます。
「もう行くのか」
「夜が明けるからな。また次のハロウィンで会おう」
ドラキュラは振り返ると戻る理由を告げました。どうやら西洋妖怪達がこの世にいられるのはハロウィンの夜だけのようです。事情を飲み込めた赤鬼は去っていく西洋妖怪に向かって元気付けるように大声で叫びました。
「ああ、その時は俺らが勝つからな!」
「言ってろ、それはこっちの台詞だ!」
こうして西洋妖怪の魔の手から日本を救った日本妖怪は勝利の美酒に酔いしれます。改めて地上の様子を見ると、そこにはもう人々の姿はありませんでした。
大都会なら夜通し騒ぐ人も多いらしいのですけど、この話の舞台の日本の地方都市ではそこまで頑張る若者は特にいません。夜が明けると言う事でその早朝の風景はとっくに普段の景色となっていました。
全てが終わって同じくボロボロのひとつ目小僧は、この夜の事を改めて思い返します。
「結局ハロウィンって何だったんだ?」
「だから、おばけが大手を振って現れていいお祭りだってば」
ひとつ目小僧の前にいつの間にか現れていた子狐が得意げに話します。百鬼夜行に参加していない狐は無傷でピンピンしていました。それを目にした赤鬼は、ようやく子狐にからかわれていた事実に気付きます。
「あ、てめっ狐! 今までどこにいた!」
「オイラは面白ければそれでいいんだよォ~」
怒られそうな雰囲気を素早く察した狐は一目散に逃げ出しました。その逃げ足の速さは一級品です。姿が小さくなっていくのを呆れた顔で見届けながら、赤鬼はつまらなさそうにこぼしました。
「チッ、逃げやがった」
「でも案外面白かったじゃない」
「そうじゃのう。名も売れたし、あの子狐に感謝じゃよ」
やがてゆっくりと街に朝日が射し始めます。流石の日本妖怪もいつまでもここにはいられません。完全に朝の気配になる前に妖怪達はそれぞれの住処に散っていきました。
そこから先はいつもの時間。街はまるで妖怪なんて最初からいなかったかのような振る舞いを見せています。
その後、世間では妖怪ブームが再来。忘れかけられていた妖怪達も何とか息を吹き返したと言う話です。
ハロウィンの夜の西洋妖怪対日本妖怪のバトルはそれからも続き、いつの間にか年に一回の恒例の行事になっていきました。今夜のハロウィンでは果たしてどちらに軍配が上がるのか――。
それを楽しみにしているのは当の妖怪達なのかも知れませんね。
ハロウィン妖怪大戦争! にゃべ♪ @nyabech2016
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