のっけから魅力的な美女が登場します。それも三人も。ハーレムものの名に恥じぬ極上の滑り出しです。
そして自分はメルク派です。ええ少数派でしょうね。と同時に自然と一人に絞ってしまう辺り、自分にはハーレム属性皆無なのでしょうね……。
とある秘密を隠し持った主人公という設定が自分的にはツボというかかなり強力な執筆動機の一つでありまして、自作においても似たような設定を多用するのですが、作者様のストーリーに無理なく溶け込ませる手腕のなんと見事なことか。
詳述は避けますが終盤の得票数のひっくり返し方や、ラスト間際の〈実は俺〇〇だった〉設定と直後の落とし方に関しましても、あーこれこれ! これだよこういうのが読みたいんだよ!! って感じで、すっかりのめり込んでしまいました。
全編に亘って読者を楽しませよう面白がらせようという配慮や仕掛けが縦横に敷き詰められた、読みどころ満載の異世界ハーレム娯楽大作です。
各話冒頭の挿話に心躍らせるもよし、締めの地誌風描写に笑みをこぼすもよし、哀れな王子に突き刺さる罵倒の数々に腹を抱えるもよし、我らがメルク様の〈異世界の異世界はこっち側なのです?〉設定に胸をときめかせるもよし(自分だけ?)、もちろん物語を彩るハーレム候補の中から自分好みの美人さんを探すもよし。
17万字超えの大長編ですが、文量を感じさせない読みやすさなのも、「レベルがハンパねえのです!」
正確には、「伝説のバカ王子の世直し旅」である。だが、王子という単語をいれてしまうと、これから読もうという人にあらぬ誤解を与えてしまう、これはそんな内容の冒険譚である。
バカ王子で有名なガルフォンスの夢は、ハーレムを作ること。そのハーレム要員でもある美少女たちを引き連れて、世界を巡る旅をしている。
……のだが、王子であるはずのガルフォンスの、周囲からの扱いがこれまた酷い。ヒロインである金髪美人のアイシャからは、毎回聖剣で殴り飛ばされて場外ホームラン。お金がなくて、お店でオーダーするのはいつも「塩パスタ」。
格好良く名乗れば、民衆が声をそろえて、「伝説のバカ王子!」。
世の中を良くしたい、そういう思いはあるのだが、すべてが裏目に出てしまい、何かやるたびに、「バカ王子」としての名声が上がってゆく。
だが、実はちゃんと素晴らしい業績も残しているのだ。彼がいなければ、女子の下着がかわいいパンティーになることはなかったろう。他にもある。あとは、そうパンティーの大量生産ラインの構築とか。それから、パンティー製作の利益で、ある家族を救ったりとか。
というような話なのだが、それは置いておいて。
本作はコメディーである。いやもしかしたら、ファンタジーとして書かれたのかもしれないが。
シュールなギャグ、秀逸な言い回し、キャラクターたちのドタバタ。どれもが楽しい。すこし難解なお笑いもあるのだが、そういったギャグは分かったときは突き刺さるほどにおかしいものだ。
そういったギャグの嵐に紛れて、だがしかし、ちゃんとしたストーリーもきっちり作られている。のだが、たとえ作者が、なんかちょっといい話を書こうとしたとしても、ガルフォンスはじめとするキャラクターたちがよってたかって足を踏み外し、してはならないことをやりまくり、大惨事を引き起こしてしまう。そういうシステムのお話である。それくらい、お笑い偏差値の高いキャラが揃っている。
また、シュールなギャグやジョークにつなげるための伏線が随所に張り巡らされ、一瞬でも隙あらば、爆笑の刃が突き込まれてくる。というより、これは真摯にギャグに向き合っていると表現すべきできないだろうか。
すべてがギャグの地雷。ことごとくが、笑撃のブービートラップだ。
とまあ、長々と書いてしまったが、要点だけ述べさせていただくと、これは面白くて可笑しくて楽しいお話である。そして、ムルカジくんがとても不幸な物語なのである。
軽快に進むストーリーにコメディポイントがこれでもかと散りばめられ、息をもつかせぬ笑いの中でふと挟まれる切ない思い。
ひと癖もふた癖もあるヒロイン達に囲まれた主人公の冒険譚を通して、そんな濃厚な読書体験を楽しめるのが本作です。
国中で「バカ王子」の二つ名を欲しいままにするガルフォンスですが、実は彼には裏の顔があるのです。
表の彼を殺そうとし、裏の彼に結婚を迫る元プリンセスのアイシャ。
表の彼に好意を寄せ、裏の彼を殺そうと目論む魔族のジルコニア。
表と裏の顔両方を知り、古代語(=オタク用語)を駆使する謎の少女メルク。
それぞれにそれぞれの背景があり、思いがあり、目標があり、それらが絡み合いつつも行く先々でたくさんの笑顔と破壊をもたらすパーティ。
そんな彼らのドタバタが生み出す幸福という名の奇跡を皆さんもどうぞ体験してください(^^)
ちなみに、この物語の中でダントツ不幸なのはガルフではなくムルカジ君であると断言します(笑)
ムルカジ君に幸あれ!