竜を画いて、睛を点ず

作者 美澄 そら

8

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★★★ Excellent!!!

千尋はとても感受性の高い中学生。
絵が得意なので、中学校でも美術部に入部しました。
ところが長身の隠れイケメン、獅子屋くんに誘われたんだ!

「一緒に書道パフォーマンスやろうぜ」

それは、私たち誰もが通った道のりです。
中学生になったとたん、すごくおねえさんやおにいさんになったように感じ、これまで知らなかった面白い同級生と次々に出会っていく。
でもやっぱりどこか子供なので、小さなことで揉め、恋をし、そしてその小さなことこそが「生きる全て」だった。

千尋くんと獅子屋くんに巻き込まれる形で、無垢な美少女の幸、スタイル満点のコスプレイヤー櫛田さん、そして温かい旧友の勇樹と公弘など、たくさんの個性的な中学生が集まってきます。
筆者の描かれる細かな場景描写が物語に花を咲かせます。
入学式で、写真待ちの列。
窓全開になった体育館に吹き込む青の風。
大切な友達と、ペットボトルで乾杯。

私たちは時として、物語世界に憧れを抱きます。あんなところに住んで、あんなふうな出会いをしたかったなぁって。
だけど私たちにもあった。
たしかに、物語のような景色は存在していた。まさにこの瞬間だってそう。あなたの室内、電車の中、どこにだって美しい世界が広がっている。それでも千尋たちの毎日に魅せられてしまうのは、それがもう『二度と戻れない時間』と知っているから。

本作は私たちがかつて歩いた、確実にそこにあった日々を思い出させてくれるとともに、それらの日々が間違いなく今の私たちに繋がっていると教えてくれます。

だから私たちも彼らのように。
日常という『紙』に、思いきり筆をぶつけよう。
無自覚な心に、どへたくそな字で『夢』と書いてやろう。

★★★ Excellent!!!

春の柔らかな日の情景。

初々しい、千尋の
入学の日の様子が、

瑞々しい気配を持って伝わって来ます。


千尋の境遇から、

新たな中学生活への期待、
前向きな気持ちと、

馴染みの、勇樹と公弘の存在が、
温かく、包むような気がします。


新たな出会いを迎える、

正親の第一印象が強烈で、

わくわくしてきます。



部活での何気ない、千尋と周囲との
雰囲気のずれ、

抱く想い。


微妙な心理が繊細に描かれていて、
とても分かる想いがします。


絵を描くことのきっかけ。


おばあちゃんの言葉は、

物を作る人にとって、
かけてほしい言葉の、ひとつではないでしょうか。

胸にじんわりと染みました。



『夢』の文字。


千尋と、正親を繋いだ、
一枚の書の存在。


千尋の描く姿に、感動して、
涙が出る想いがします。


わくわくと合わさる、
真剣であればこその、
二人の戸惑いや想い。


見上げる絵画の存在、
時を伝える表現。

拝読していると、
小さな瞬間にも、はっとさせられます。


創造力が湧く瞬間。

誰かとそれを分かち合いたいと思ったことが
ある人にとって。

心震える瞬間が、
物語の中に描かれていると思います。