第4話 第151小隊 2

肩、胸、足、連続で高速の突きを放つがフェルは最小の動きでよける。

初撃、ルチアにとって最高に近い速度を持った一撃を首の動きだけでいとも簡単に避けられてから手加減はしていない。それでもこの始末だ。

頭、腹、なおも攻めるが首を傾け魔法剣で払われ、かすりすらしない。

こうなると苛立ちが増してくる。未だに魔法剣の刀身が少しも乱れていないのだ。

魔法剣の維持には集中力がいる。つまり、回避に手一杯になると刀身が乱れるはずだ。それが無いということは、完全に動きが見切られているということであり、脅威に感じていないということでもある。自分が馬鹿にされているようで気分が悪い。

胸に2発、首、少し間を置いて頭と腹を一呼吸で撃ち込むが、やはり魔法剣と僅かな体さばきでいなされる。

埒が明かない、そう思ったルチアは考えていたことを行動に移す。

「クッ……!!」

苛立ちを表に出しながら、細剣を横に振るルチア。少し振りすぎてすぐには構えられない。ルチアの一撃を後ろに引いて躱したフェルはその隙を見逃さない。すぐさま、踏み込みながら右の魔法剣を振り下ろす。

だが、ルチアの目論見通りだ。こちらも踏み込みながら空いていた左の拳をガラ空きの腹目掛けて振るう。

そして一瞬の後に決着がついた。

――ルチアはギリッという音が自分の口の中からするのを聴いた。思わず歯ぎしりをした音だ。

ルチアの拳はフェルの右手に腕を掴まれているせいで届いておらず、フェルの魔法剣がルチアの首筋にあてがわれている。

ルチアの一撃は見てから回避が間に合うものでは無かった。それが防がれているということは――

「……どうして分かったの?」

「あんたの攻撃はどれも洗練されたものばかりだった。それこそ、迂闊に攻め込めない程に。それだけの訓練を積んでいる奴があんな隙を見せるはずがない。確実に何かあると思った。」

「そう……」

つまりは完全に読み切られていたのだ。

互いに構えを解いたところに、

「ハイ、おつかれさん。」

と、頭をポンと叩かれた。

隊長はフェルの方を向きそのまま言葉を繋げる。

「いい試合だったんじゃねえか?今、お前と手合わせしてたのがルチア・フォン・クロイス。クロイス家っつう騎士の家系の長女様だ。んで、俺がこの隊の隊長のダン。使ってる武器は魔導銃だ。よろしくな。」

と、手を出しフェルもそれを握り返す。

「んじゃあまあ、そろそろガーネットが料理作り終える頃だろうし、戻るぞ。」

そういい隊舎に戻る隊長とそれに続くフェル。ルチアはただ悔しさを噛み締めるしかできなかった。

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蒼の記憶 @ayushio

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